『大胆な家族』
チョ・ミョンナム (監督)
カム・ウソン (主演男優)
シン・グ (男優)
キム・スロ (男優)
2005年制作
日本では劇場未公開
☆☆☆

余命いくばくもない老父の財産を狙って「南北統一した」と騙す、まさに「大胆な家族」を描いた不謹慎極まりない悪ノリコメディー。オリジナルタイトルは、「
간 튼 가족(カンクン カジョk)」=「肝っ玉の大きな家族」。英語タイトルは“A Bold Family”。
末期ガンのため余命3ヶ月と宣告されたおじいさん、口を開けば、韓国で家族をもつ前に北朝鮮に残してきた(もう1人の)妻と娘に一目逢いたい、と繰り返すばかり。遺産相続の準備で会った弁護士の話によると、何とこのおじいさん、家族にも内緒で、50億ウォン(約5億円)相当の土地を保有しているという。ところが、遺言書には、生きている間に南北両国が統一されなければ、遺産は全て統一部(南北統一問題を専門的に扱う韓国の政府機関)に寄贈する、と書かれている。
知人の借金の保証人になってしまい取り立て屋に追い回されていた長男は、遺言書を書き直させるため、三流映画監督の次男を巻き込んで「南北が統一された」という偽ニュース番組をでっち上げ、おじいさんをまんまと騙すことに成功する。ところが、統一のニュースに喜んだおじいさんの体調がウソのように回復してしまったものだから、さぁ大変。元気になったおじいさんを騙し続けるため、ウソはどんどん大掛かりになっていく…。

南北の平和統一の(偽)ニュースに涙を流して喜ぶおじいさんの表情を見ると、(不謹慎好きの僕でさえ)「いくら何でも、このウソには笑えないな〜」と思って観ていたのだけど(だって、そういうおじいさん・おばあさんは実際にたくさんいるのだろうし)、膨らみ続けたウソのバブルがついにハジけてしまった後、一転して訪れるシンミリムードに浸っていると、ただの悪ノリコメディーではないのかもしれないな、という気がしてきた。ウソにウソを重ねていく過程はまさに非現実的なバカ騒ぎとして描かれているのだけど、「フィクションのコメディー映画の中だけじゃなく、本当にこんな風に統一が実現できたらいいのに」という作り手の想いがこの映画の背景にあるような気がするのだ。バカ騒ぎの後には涙を誘うお決まりの展開になっていて、まぁありきたりのストーリー展開だと思うけれど、統一への想いは本物なのかもしれないなと思うと、それなりに胸に迫るものがある。これはこれでいいのかも。

驚くべきは、こんな悪ノリコメディー映画に主演しているのが『
王の男』(イ・ジュニク監督 2006年)のカム・ウソンだということ。彼、変なパーマに中途半端なヒゲの冴えない男を好演している。実は僕は
彼と一緒に写真を撮って貰ったことがあるのだが、『王の男』の格好良過ぎる彼よりも本作に登場する格好悪い彼を観ていて、「この人と握手したことあるんだな〜」という優越感(?)のようなものが湧いてきた。おじいさん役のシン・グは、あの『
八月のクリスマス』(ホ・ジノ監督 1998年)でハン・ソッキュの父親役を演じていた人。韓国の年老いた父のイメージって、こういう感じなのだろう。僕が韓流男優の中で一番好きなのは、何を隠そう、次男を演じていたキム・スロ。久々に彼の出演している映画を観た。その他、主要なキャストとして『
家門の危機』(チョン・ヨンギ監督 2005年)や『家門の復活』(チョン・ヨンギ監督 2006年)に出ていた役者さんたちが出ている。なるほど、こういったキャストがコメディー系の役者さんなわけか。
今日の一言韓国語は「
한 번 해 보자.(ハンボン ヘボヂャ)」=「1回やってみよう」。ニュアンスとしては、「とにかく試しに1度やってみよう」に近いのではないかと思う。

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