『菊花の香り〜世界でいちばん愛されたひと〜』
イ・ジョンウク (監督)
チャン・ジニョン (主演女優)
パク・ヘイル (主演男優)
ソン・ソンミ (女優)
2003年制作
2004年日本公開
☆☆☆☆

オリジナルタイトルも「
국화꽃 향기(クックァッコッ ヒャンギ)」=「菊の花 香り」。チャン・ジニョンとパク・ヘイルによる悲劇的な純愛ストーリー。韓国のベストセラー小説(日本語にも翻訳されている)の映画化。
前半は、年上の女性に対する男の片想いの話。パク・ヘイルがちょっと頼りなげな大学生を演じている。それに対してチャン・ジニョンは何と言うかたくましい感じ。
後半は、新婚バカ夫婦時代は長くは続かず、2人が自分たちを引き裂く過酷な運命を受け入れる、という話。カナしそうな女の顔とツラそうな男の顔。愛し合う男と女が、そんな顔するんじゃねーっっ!!
この映画には「片想い文化」が渦巻いているような感じがする。前半は単に、年下の男のコの、年上の女性に対する片想い話で済んでるんだけど、後半は一方的な片想いではなくて、お互いの想いがありながら敢えてそれを言わない、言わないんだけどお互いに相手の想いをわかっている、わかっているんだけど敢えてわかっていないフリをしている、って感じになる。これを切ないと感じる人が多いから原作小説がヒットしたんだろうけど、僕はこういうのダメね。「何でこの人たち、思っていることを言わないんだろう?」と思ってしまうから。アホか、と思っちゃうんですよね。

片想いの重要な性質として、自己完結している、完全に独りよがりである、現実のコミュニケーションは起きない、というところがあるのだと思うんだけど、だからこそ片想いってのは許されるんだと思うんですよね(変な言い方だけど)。それはもう片想いしている本人の問題だから。2人にとっての問題じゃないから。ところが、現実にコミュニケートすべき2人が双方向的に片想い状態になっちゃうと、それは致命的なコミュニケーションの失敗ではないかと感じちゃうんですよね。
(・・・と思っていたのだけど、もう1回観直してみて少し感想がかわった。彼らは、僕から見たら致命的なコミュニケーションの失敗に見えるような、そういう種類のコミュニケーションの仕方をしているのだろうなぁ、と。そして、そういうコミュニケーションの仕方に意味を見出す人たちが世の中には大勢いるのだろうなぁ、と。僕にとっては意味がない、というだけで。)
この物語において非常に重要な人物として、主人公の女性の親友で、男のコの先輩でもある、もう1人の女性がいる(ソン・ソンミ)。2人の片想い合戦を見守っているのは、実はこの人だ。何故か? ここにもう1つの片想いがあるからだ。主人公の2人のコミュニケーションがまがりなりにも成り立っているのは、この人のおかげだ。この人がいるから2人のコミュニケーションは成り立っている。この人こそこの物語の本当の主人公ではないのか、という気までしてきた。本当にツラいのはこの人かもなぁ。

『
オーバー・ザ・レインボー』で初めてチャン・ジニョンを見て可愛いなと思っていたのだけど(だからこの映画を観たのだけど)、もうすっごい好き。DVDパッケージの写真はちょっとイマイチ。映画の中の方がずっと可愛い。それは『
オーバー・ザ・レインボー』のDVDパッケージ写真にも言えると思う。
ここからは韓国語の話。感謝の表現というのは実に様々な言葉が使われているのだと思うが、教科書的には何と言ってもまず「
감사합니다(カ
ムサァ
ムニダ)」が挙げられる。ところが実際の韓流映画ではあまり聞かないように思う。最近気づいたのが、あらたまった感じで「
고맙습니다(コマ
プス
ムニダ)」がときどき使われていること。友達や知り合いに対してフランクに「
고마워요(コマウォヨ〜)」。親友に向かって「
고맙다(コマ
プタ〜)」。この映画では新婚夫婦間で「
고마워(コマウォ〜)」と言っている場面があった。「サンキュ〜」みたいな感じか。たぶんこれ全部同じ言葉なんだと思うんだけど・・・。
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「片想い文化」
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「菊花の香り」(Taki Corporation)

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