『初恋のアルバム――人魚姫のいた島――』
パク・フンシク (監督)
チョン・ドヨン (主演女優)
パク・ヘイル (主演男優)
2004年制作
2005年日本公開
☆☆

『スキャンダル』『
私にも妻がいたらいいのに』のチョン・ドヨン、『
菊花の香り』『
殺人の追憶』のパク・ヘイルによる、ファンタジー純愛映画。『
私にも妻がいたらいいのに』で監督デビューしたパク・フンシクの第2作。「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2005」ヤング・ファンタスティック部門のグランプリを獲得している。

生活に疲れ行方をくらましてしまった父を探しに、母の故郷である済州島(チェヂュド)近辺の離島(撮影ロケ地は牛島(ウド))を訪ねた彼らの1人娘は、そこで突然タイムスリップし、まだ結婚前の20歳の母と23歳の父に出会う。口が悪く品のない母とお人好しで頼りない父を嫌っていた娘だったが、無邪気な母と優しい父の初恋の行方を見守っているうちに両親への想いを新たにする、というストーリー。島の景色が美しく、韓国の田舎の風景を堪能できる。
映画のオリジナルタイトルは『
인어공주(イノゴ
ンヂュ)』=「人魚姫」。貧しく学校に行けなかった母に、文字の読み書きを教えた父が贈った本が「人魚姫」なのだ。島で海女さんをしていた彼女が彼には人魚姫に見えていたのだろう。

チョン・ドヨンが30年前の母と現代の娘の2役に挑んでいる。コンピュータで合成された2人の掛け合いのシーンも多い。『
我が心のオルガン』の小学生役と全く同じ感じで若い母を、現代の娘の方は木村佳乃みたいな感じで演じている。ちなみに、日本版DVDパッケージ写真の白いワンピース姿の母は映画では1度も登場しない。
パク・ヘイルは、『
菊花の香り』同様、優しく誠実な男性を爽やかに演じている(『
菊花の香り』よりは大人っぽいが)。ただ、もうちょっとこの男性をしっかり描いて欲しかったなぁ。結婚後の夫婦にいったい何が起きたのかも知りたいところ。
映画としては…、もう一工夫欲しかった。母と娘の1人2役と言えば、ソン・イェジンの『
ラブストーリー』、チョン・ドヨンの田舎の素朴な少女役と言えば、『
我が心のオルガン』を思い出す。本作がこの2作に対抗できるかと言えば…、難しいと思う。たぶん娘の描き方が不充分なのだ。
考えてみると、この映画、娘が30年前にタイムスリップしてしまう必然性がない。これを必然とするには、若い頃の両親の姿を見た娘の心境の変化をじっくり描く必要がある。両親への想いとか、自身の恋愛観・結婚観などについてだ。それがないので、タイムスリップして純真だったお母さんの少女時代を見ちゃいました〜、というだけの映画に終わってしまっているのだと思う。
今回、韓国語の発音で1つ気になったのが、語尾の「セヨ」の発音。普通、「アニョハセヨ?」「ヨブセヨ?」と発音するところを、本作では「アニョハシヨ?」「ヨブシヨ?」と発音している例があった。これって済州島訛りなのかなぁ。
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「初恋のアルバム」公式サイト(日本語 タキコーポレーション)

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