『情愛』
ユ・ハ (監督)
カム・ウソン (主演男優)
オム・ジョンファ (主演女優)
2002年制作
日本劇場未公開
☆☆☆☆

30歳前後の男女による大人の恋愛の話。この映画なら韓流ファン以外の人にもオススメできる。ただし、大人の恋愛と言っても、洗練されたお洒落なラブストーリー、というわけではない。
韓国版予告編で使われていた言葉が、この映画の内容を端的に示していると思う。「
결혼은 조건좋은 남자와...연애는 사랑하는 사람과...(キョロヌ
ン チョゴ
ンヂョウ
ン ナ
ムヂャワ... ヨネヌ
ン サラ
ングガヌ
ン サラ
ムグァ...)」=「結婚は好条件の男と…恋愛は愛する人と…」。まさにそんな映画。
これまで観た約40本の韓流映画の中で最もベッドシーンが多かった。いやー、ビックリした。韓国国内では18歳未満閲覧不可。そりゃそうだよ(だんだん感覚が韓国人に近づきつつあります)。
主役の男優がどことなくお笑い芸人の土田晃之に似ていて誰だろうと思っていたら、『
王の男』のカム・ウソンだった。彼の映画デビュー作。セックスはするけど結婚はしたくない、そもそも恋愛だってしなくたって構わない、というような大学講師(ちなみに専攻は英文学)を演じている。相手役は韓国のトップシンガーでもあるオム・ジョンファ。チャン・ジニョンと共演していた『
シングルス』で見ていたはずなのだが、正直あまり印象に残っていなかった。本作では、結婚による安定した生活と愛人との充実した恋愛の両方を一度に手に入れようとする貪欲な女の役を濃厚に演じている。

オリジナルタイトルは、「
결혼은, 미친짓이다(キョロヌ
ン、ミチ
ンヂシダ)」=「結婚は、狂気の沙汰だ」。主人公の女性は、「恋愛と結婚は別」と割り切っていて、男との恋愛関係を続けながらも結婚相手として相応しい相手を探し続け、ついには医者と結婚してしまう。その後、(おそらくはダンナが医者であるという強大な経済力を背景に)男に独り暮らしを始めさせ、週末夫婦生活を始める。彼女の結婚生活はまさに狂気の沙汰だ。
この女性の考えは明確だ。結婚によって保障される経済的安定は欲しいが、必ずしも結婚相手と恋愛相手が一致している必要はない。実は、稼ぎの良い男性にとって悪魔のように思えるこのテの女性こそ、稼ぎの悪い男性にとっては天使のような存在だ(たまに会ってセックスするだけ。結婚してくれとも、もっと稼げとも言わない。彼女に子供さえできなければ、この均衡は崩れない。現にこの映画は本質的には何も起きずに終わる)。面白いのは、こんな都合の良い女と付き合っているくせに、主人公の男がますます顔を曇らせていくところだ。それでは、この男にとっていったい何が不満となり得るのか?

彼も彼女も「恋愛と結婚は別」と考えている点では一致している。しかしだからこそ、彼は結婚する気をなくし彼女は結婚だけはしようとする。彼女にとって結婚は、最低限の生活保障の手段に過ぎない。それが形式的なものであれ何ら問題はない。ところが、男が結婚を嫌がるのは、どんな結婚もすぐに形式的なものになりさがると思っているからだ。彼は、形式的な夫婦関係という偽りの関係が嫌だから、恋愛はしても結婚はしたくないと思っている。
さて、彼女は結婚した。しかし愛人との関係は続いている。この関係は、彼女にとっては「浮気」ではない。「恋愛と結婚は別」である以上、恋愛は彼と「しか」していない。ところが彼から見ると、自分は「彼女にとってただの浮気相手」にしか見えない。彼女は彼との「新婚生活」を過度とも言えるほど楽しもうとする。それは、これが彼女にとって「本当」の新婚生活だからだ。しかし彼には、それはママゴト、偽りの夫婦関係にしか感じられない。偽りの関係が嫌で結婚しないのに、「本当」であったはずの恋愛関係すら偽りの関係としてしか感じられないのだとしたら、彼が彼女に別れを告げるのは必然と言える。
結局、お金はなくてもあなたと一緒にいたいと、主人公の男は言われたいってことなのかなぁ…。あなたが一番大切だと、そう言って欲しいってことなのかなぁ…。
今日の一言韓国語は「
사랑하는 사람(サラ
ングガヌ
ン サラ
ム)」=「愛する人」。日本語字幕に「愛する人」って出るたびに何て言っているんだろうとずっと思ってたんだよね〜。ついにわかった。ポイントはやっぱり「
사랑」と「
사람」の最後の
받침(パッチ
ム)の違いだろうね〜。やっとわかった。

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