『シムソンズ』
佐藤祐市(監督)
加藤ローサ(主演女優)
藤井美菜(女優)
高橋真唯(女優)
星井七瀬(女優)
大泉洋(男優)
2006年制作
☆☆☆
『
ウォータボーイズ』『
スウィングガールズ』路線に乗った女子高生青春ムービー。全てが予定調和的に進んでいく無難な映画なので安心して観ていられる。テレビのバラエティ番組に求めるもの以上のものを求めてはいけない映画。北海道東部の常呂町(ちなみに、常呂町は現在は北見市の一部になっている)が舞台だというので、つい観てしまいました…。

実話に基づいている、というのがちょっとした売りのようだ。ソルトレイクオリンピックに出場したカーリング女子日本代表チーム「シムソンズ」がこの映画のモデルとなっている、とのこと(ちなみに、トリノオリンピックに出場した「チーム青森」の年長者2名はシムソンズの元メンバー)。ただ、女子高生が地元の友達と(地元で盛んな)カーリングのチームを結成し大会に出場する、という本当にただそれだけの話なので、実話もクソもないとも言える。
娯楽作品として考えると、『
ウォータボーイズ』『
スウィングガールズ』の方が一枚上だと思う。あちらの方が漫画的・テレビ的テイストが徹底しているのだ。上述の通り、ストーリーもクソもないし、主人公の女のコ4人組にせよ大泉洋演じるコーチにせよ人物描写も浅い。まぁ、加藤ローサと高橋真唯はコミカルな演技で頑張っているとは思うけど(実は…、笑いのセンスだけは妙にハマッてしまった。このセンスは韓流映画『
小さな恋のステップ』に通じるものがあった)。

しかし、この映画には、『
ウォータボーイズ』『
スウィングガールズ』に決定的に欠けていた要素である、「お先真っ暗感」がある。とにかく何かに打ち込まなくてはやっていられない崖っぷち感みたいなものが多少描かれている。悠長に自分探しの旅に出かける余裕は時間的にも経済的にもない。今ここで何かしないと私の人生もうおしまいだ、という焦りが前提としてある。そういうところに、映画の舞台が北海道の過疎の町だということが活かされている(たぶん実際に常呂町でカーリングを始めた人たちだって、単に「楽しくて」始めたわけではないだろうと思う)。『
スウィングガールズ』で不満だったのはまさにその点で、せっかく東北の片田舎が舞台なのに、女子高生がビックバンドジャズでも何でもとにかく何かやらずにはいられなくなってしまう焦燥感が全く描かれていなかった。もちろん、本作でのその焦燥感の描き方も浅いんだけど、全くないよりはマシ。結局、何かに打ち込んでしまうのは、それが楽しいからではなくて、そうせざるを得ないほど人生が苦しいからだと思うんだよね。で、それは人にとって普遍的なテーマだから、それを多少なりとも描いている本作は星3つ、全く描いていない『
ウォータボーイズ』『
スウィングガールズ』は星2つ。
加藤ローサが微妙にローリー寺西みたい。良く言えばリブ・タイラー、悪く言えばスティーブン・タイラー。大泉洋はいつものまま。ある意味ハマリ役。考えてみると、『
ウォータボーイズ』『
スウィングガールズ』では、この役を竹中直人がやっているわけで、そのポジションに大泉洋がいるってことは凄いことだと思う。
→ 「
『シムソンズ』公式サイト」

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