『死に花』
犬童一心 (監督)
山崎努 (主演男優)
宇津井健 (男優)
青島幸男 (男優)
谷啓 (男優)
松原智恵子 (女優)
星野真里 (女優)
藤岡琢也 (男優)
長門勇 (男優)
2004年制作
2004年公開
☆☆

東京郊外の超高級老人ホームで暮らす悠々自適の老人たち。最期にもう一花咲かそうと、地下を掘り銀行の金庫を破って17億円を奪う、という、仲間の遺した大胆不敵な「死に花」計画を実行に移す。監督は『ジョゼと虎と魚たち』(2003年)の犬童一心、原作は太田蘭三による同名小説。
『大誘拐 RAINBOW KIDS』(岡本喜八 監督 1991年)のような痛快老人コメディを期待していたのだけど、だいぶ雰囲気が違った。前半はかなりシンミリムード。これは、本作が単なるコメディではなくて、老人たちが人生の最期に輝きを取り戻す、というヒューマンドラマでもあるから。ただ、そのテーマが僕にはよくわからなくて…。
そもそも、主人公の老人たちが超高級老人ホームに暮らすお金持ちだという設定が謎。何不自由なく暮らせるお金はあるけれど、生きがいは買えません、という話なのだろうか? いや、違うよねぇ。

「死に花」チームの平均年齢は73歳で、この世代の人たちは子供の頃に戦争を経験しているから、楽しく遊んだ経験がない。人生の最期に初めて心の底から夢中になって遊びました、という話なのだろうか? それも違うと思う。
単に、まだまだ若いもんには負けん!というだけの映画なのだろうか? ぜーぜー言いながらただただ穴を掘る、という馬鹿バカしさは多少面白かったけれど、常識に縛られた若者を嘲笑うかのような、老人ならではの老獪さをもっと発揮して欲しかったとも思う。
たぶん、仲間たちは皆先に逝ってしまい、血沸き肉踊る興奮を共有してくれる友はもう誰もいない、という、自分独りだけ生き続けることの空虚感が最大のテーマなのだろうと思う(その象徴的存在として(?)森繁久彌も出演している)。だから、これはある意味、仲間と一緒にアドベンチャーに乗り出すというワクワク感を描いた話。そして、そのワクワク感に賞味期限はない、という話。…と納得したいんだけど、どうなんだろうなぁ。

僕は観ていないのだけど、人工衛星の修理のために宇宙に飛び出す老人たちを描いた、アメリカ映画『スペース カウボーイ』(クリント・イーストウッド 監督 2000年)を想い出した。あの映画はいったい何をメインテーマにしているのだろう。ちょっと見比べてみてみたいような気になってきた。
と言うわけで、期待していたような映画ではなかったし、正直どうも腑に落ちないんだけど、「久々に映画を観た」という気はする。この感じってどこから生じているのだろう? 照明? フィルム? 映像が「あー、これが映画の画面ってものだよなー」と感じさせるんだけど、何なんだろう?
ちなみに、若いコ代表として星野真里が老人ホームの新人職員(これがまた福祉マインドゼロ)を演じている。『
さよならみどりちゃん』(古厩智之 監督 2004年)での(妙に浮いていた)ヌードシーンに引き続き、何と本作では青島幸男とのキスシーン(と言うか、人工呼吸なのだが)を見せている。この人も大変だなー。

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