『僕の彼女はサイボーグ』
クァク・ジェヨン (監督)
綾瀬はるか (主演女優)
小出恵介 (主演男優)
2008年制作
2008年公開
☆☆

『
猟奇的な彼女』(2001年)、『
ラブストーリー』(2003年)のクァク・ジェヨン監督による韓流SFラブ・コメディ。と言っても、監督以外は全て日本のスタッフとキャストで撮った日本映画。未来から来た美女型サイボーグに恋してしまった、冴えない男子大学生の悲喜こもごもを描く。ある意味、おっぱい映画(そんなジャンルないか…)。東アジア・東南アジアを中心に10ヵ国で公開、とのこと。

20歳の大学生ジローは、誕生日の夜、突然現れた不思議な美女と楽しい一夜を過ごす。1年後、再び彼の前に現れた彼女は、未来のジローが現在の自分の元に送り込んだ、人間そっくりに造られたサイボーグだった。「彼女」と奇妙な同居生活を始めた彼は、どんどん彼女に惹かれていくが…。
またクァク・ジェヨンに裏切られた、と言うか、思った通りだった、と言うべきか。これまで彼の関わった映画を結構観て(『猟奇的な彼女』、『
ピアノを弾く大統領』(チョン・マンベ監督 2002年 脚本で参加)、『
純愛中毒』(パク・ヨンフン監督 2002年 脚色で参加)、『ラブストーリー』、『
僕の彼女を紹介します』(2004年)、『
デイジー』(アンドリュー・ラウ監督 2006年 脚本で参加))、それなりに面白かったのは『純愛中毒』だけ。「彼の撮る映画はクダラない」という結論がほぼ出ていた。

しかしまぁ、『猟奇的な彼女』や『僕の彼女を紹介します』のチョン・ジヒョンにせよ、『ラブストーリー』のソン・イェジンにせよ、『ピアノを弾く大統領』のチェ・ジウにせよ、主演女優の魅力を引き出すことにかけては彼は確かに上手いから、綾瀬はるかを可愛く撮る、という趣旨の映画なら、(日本人女優の演技の方が僕自身観ていてシックリくるかもしれないし)そこそこイケるかも、とつい思ってしまったのが運の尽き。少しでも期待した僕が馬鹿だった。「
サイボーグでも大丈夫」と思ったのだけど…。
正直、彼には面白エピソードを羅列するだけの映画しか撮れないのだと思う(『猟奇的な彼女』『僕の彼女を紹介します』『ピアノを弾く大統領』に顕著)。彼の映画は必ず最後にバタバタして終わる。ストーリーもクソもなく、本来終わりようのないものを無理矢理終わらせようとするからだと思う。『ラブストーリー』は母と娘のエピソードを交互に展開することで、『デイジー』は前半と後半で大きく視点をかえることで、多少観られるものになってはいるが。

本作でも、物語の最後に視点をかえたり、種明かし要素を導入したり(『
いま、会いにゆきます』(土井裕泰 監督 2004年)、『
ただ、君を愛してる』(新城毅彦 監督 2006年)、『そのときは彼によろしく』(平川雄一朗 監督 2007年)あたりを研究した?)、タイムスリップを利用して時間軸を入れ替えたり並行世界を描いてみたり、東京なんて大地震が起きて壊滅状態だし(笑)、いろいろ工夫はしているのだが…、本質的にクダラない(笑)。『猟奇的な彼女』『僕の彼女を紹介します』の監督独自のテイストに、『ターミネーター』(ジェームズ・キャメロン監督 1984年)シリーズのプロット、『いま、会いにゆきます』の種明かし、それにまぁ強いて言えば、のび太をいつも助けてくれる『ドラえもん』(藤子・F・不二雄)の要素を加えたような話? 描くべきものが何もなく、韓国の人気監督(本当に人気なのか?)に日本の若手俳優をキャスティングした映画を撮らせました、というだけの映画。撮影は大変だったようだが、本来感動すべき大地震のシーンで、小出恵介発する「ダメーッッ!!」に思わず爆笑してしまった(「
안돼(アンデ)〜!!」だったら泣けたのだろうか…)。

劇中、『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波とアスカのフィギュアが何度か登場する。途中1回だけ、エヴァンゲリオンで観かけたようなポーズをとっているシーンがあって気づいたのだが、綾瀬はるかの髪型が綾波(あるいは碇ユイ)似で、この映画、ひょっとすると、綾瀬はるかにプラグスーツを着せるという、ただそれだけの企画の映画なのかも…(スーツ着用時、太って見えるのでちょっと可哀相)。
その綾瀬はるかに関して言えば、サイボーグの無表情な彼女(の大きなおっぱい)と、人間のイキイキした表情の彼女(の大きなおっぱい)の、両方を楽しむことができる(だから「おっぱい映画」)。まぁ確かに、綾瀬はるかにゆで卵むいてもらったり、おんぶしてもらえたら、嬉しいかもなぁ…。未来から来たロボットがネコ型(しかも2等身)であるわけないもんね。開発するなら絶対、美女型に決まっている。彼女、クァク・ジェヨン作品の歴代ヒロインの中でも最も美しく撮られていると思う。日本映画なんで、韓国映画に比べれば映像も奇麗だし…。

対する小出恵介がどうもダメ。彼の出演している映画やドラマはほとんど観たことがなくて、他の作品でどうなのかはわからないけれど、クァク・ジェヨン作品の主演男優に必要な「愛嬌」が彼にはない。『猟奇的な彼女』の成功には、チャ・テヒョンの信じ難いほどの愛嬌が寄与していることは疑いの余地がないし、『僕の彼女を紹介します』のチャン・ヒョクにも可愛いところがある。『ラブストーリー』のチョ・スンウももの凄く表情が豊かな人(チョ・インソンが仏頂面なのが、あの映画の出来を悪くしている)。小出恵介、頑張ってチャ・テヒョン顔(困惑顔、呆れ顔、微笑み顔、等)に挑んでいるのだが、いかんせん、あれは名人芸だからな〜。無理なんだよな〜。

舞台は東京(大学キャンパスのシーンは関西の大学で撮影が行われた模様)だが、脚本も監督が書いていて、随所に韓国っぽさが垣間見られる。ジローが住んでいるのがビルの屋上部屋だったり(韓国にはよくあるみたい)、彼女が最初に作る料理が鍋料理だったり(しかも昼間っから)、お巡りさんにぶつかって「
어머(オモ)!」(「あら」「まぁ」みたいな女性言葉)、ゲップにゲロ(これは韓流っていうより監督の趣味?)、「いきなりタメ口?」って日本でも言うのかな…。
ところで、いくら仕事とは言え、「実は私、凄く遠い未来から来たの。今から100年も先の遠い未来から。タイムマシーンに乗って。」と言いながら本当に泣くって凄いと思う。たとえ、演技でも。いや、演技だからこそ。綾瀬はるか、なかなかやるな。
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「僕の彼女はサイボーグ」公式サイト

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