『パッチギ!』
井筒 和幸 (監督)
塩谷 瞬 (主演男優)
沢尻 エリカ (主演女優)
高岡 蒼佑 (男優)
2004年制作
2005年公開
☆☆☆

2006年最後に観た映画は…、これ。最後の最後は日本映画だった。数々の映画賞を受賞した本作、いったい何がそんなに評価されたのだろうと興味をもっていた。30〜40年前の関西を舞台とした、在日コリアンの不良学生たちが大暴れする青春バカ映画、程度の認識しかもっていなかったが、折からの韓流マイブームもあったし観てみることにした。
観てみると…、喧嘩に明け暮れる不良学生たちの青春映画としての側面はもちろんあるんだけど、じゃあ『ビー・バップ・ハイスクール』と同じかと言われればそれだけではなかった。映画のテーマともなっているのは南北朝鮮分断のシンボル「イムジン河」(フォーククルセダーズのセカンドシングルとして発売が決まっていたが、政治的配慮からレコード会社が発売を自粛したそうだ)だし、(そのイムジン河のように)京都の在日コリアン居住区を他の区域と区切るものとして鴨川が描かれていたり(鴨川を渡る、という行為がしばしば象徴的に用いられていた)、集団間葛藤の報復の連鎖をどうやって喰い止めるか、というテーマも一番底にはあるわけだし、高校生が覚悟を決めて大人になる、というテーマも扱われているし。

この映画、どの点が最も評価されたのだろうか。社会性のあるテーマを正面から取り上げて、しかし深刻振らずに明るくポジティブな娯楽作品としてまとめた、という点だろうか。
出演している若い役者はほとんど知らない人ばかりだったが、皆生き生きと演技していると思う。ちなみに、とってつけたように出てくる大友康平には大いに違和感あり。
2007年5月に続編『パッチギ! Love & Peace』が劇場公開されるそうだ。キャストを一新し、舞台を1970年代前半の東京に移し、在日コリアン一家を飲み込む大きな時代の渦を描くのだそうだ。舞台は今から30年も前だけど、監督がパッチギを喰らわせたいのは現代社会のようだ。実は、映画そのものよりも、この世の中にパッチギをぶちかましてやろうぜ、という監督やプロデューサーの意気込みの方が面白いかもしれない。
ところで、前から気になっていたんだけど、韓流映画で見る限り、少なくとも1960年代以降の韓国の中学・高校の制服は日本のそれとほとんど同じで、詰襟・セーラー服・ブレザーである(現代に近づくほどブレザー率が高くなるのも日本と同じ)。それなのに、日本の在日コリアンのための学校の女子の制服がチマチョゴリなのは何故なのだろうか? 実は少数派なのだろうか? しかも女生徒だけが民族服なのは何故なのだろうか?
今日の一言韓国語は「
박치기(パ
クチギ)」。「頭突き」のことで、先日亡くなった元プロレスラーの大木金太郎(韓国人)の得意技がこの「パッチギ」。映画の中の喧嘩シーンでも何度もパッチギを喰らわせている。同時に動詞として「打ち破る」「克服する」の意味もあるそうで、この映画に込めた(この映画をつくるという企画に込めた)スピリットを表しているのだと思う。映画の最後の最後に「We Shall Overcome Someday.」と表示されることからもそのことがわかる。
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「パッチギ!」オフィシャルサイト
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「パッチギ! Love & Peace」オフィシャルサイト

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