『デイジー』
アンドリュー・ラウ (監督)
イ・ソンジェ (主演男優)
チョン・ジヒョン (主演女優)
チョン・ウソン (主演男優)
2006年制作
2006年日本公開
☆☆☆

『
ほえる犬は噛まない』『
氷雨』のイ・ソンジェ、『
猟奇的な彼女』『
僕の彼女を紹介します』『
イルマーレ』のチョン・ジヒョン、『
私の頭の中の消しゴム』『サッド・ムービー』のチョン・ウソンの韓流スター3人を揃えて、オールオランダロケ(アムステルダム)を敢行、監督は今やアジアを代表する映画監督となった感のある香港のアンドリュー・ラウ、脚本は韓国のヒットメイカー、クァク・ジェヨン(逆にここに一抹の不安をおぼえる…)、音楽は日本の梅林茂(聞いたことないけど)。お金かかってそうだよ。(お金かければ良いものができるってわけじゃないけど)否応なしに期待は高まるってもんだ。そして期待が高過ぎると、たいていガッカリするんだよな〜。これだけのメンバー揃えて、何でこの程度の映画で終わるんだーっっ!!
舞台はオランダ、アムステルダム。イ・ソンジェがインタポールの刑事、チョン・ウソンがプロの殺し屋、チョン・ジヒョンが画家の卵を演じている。刑事と殺し屋は職業柄必然的に交わることになる。彼らの接点に位置するのがチョン・ジヒョン。悲劇の準備は整っていたのだ。
オリジナルタイトルは「
데이지 ----숨겨진 사랑(テイヂ ス
ムギョヂ
ン サラ
ン)」=「デイジー――隠された愛――」。デイジーというのは花の名前(マーガレットとは違う花なのかなぁ。同じ花に思えるんだけど)。チョン・ジヒョン、自分にデイジーの花を贈り続けるまだ見ぬ男性に想いを募らせる。

この映画、2000年代前半の韓流映画の枠組みから抜け出て、グローバルな方向へと踏み出していると思う。従来の韓流映画とは明らかに異なる。だからこそ、脚本、もうあと2歩くらい頑張って欲しかったなぁ…。もっと胸に残る映画にできたんじゃないかと思うんだけどなぁ〜。リリー・フランキー顔のイ・ソンジェ、良い味出してるのになぁ〜。

チョン・ジヒョンは役柄ゆえ、物語の中盤以降は笑顔なし。前半の笑顔が良いだけに、この人の豊かな表情を見ることができないのは残念。中盤以降難しい演技を求められていたと思うんだけど、単調な演技に終わってしまっていた。だからね、この辺も脚本に一工夫欲しい。ちなみに、おじいさんに向かって「私、一生おじいさんと一緒に暮らすわ〜」とか言っているのは『
ホワイト・バレンタイン』のパロディーなのか? (『
ホワイト・バレンタイン』でも、彼女はおじいさんと2人で暮らす画学生を演じており、似たようなことを言っていた。)

チョン・ウソンを見ると何故だかモリータ将軍という男を想い出す(全然似てないのだけど)。将軍、織田裕二風の髪の毛を短く切れば韓流スターみたいになるんじゃないのか?
この映画の問題点を考えてみると、テーマが2つあってどっちつかずのものになってしまっている、ということではないかと思う。1つは、人前に姿を現すことのできない殺し屋の片想いの話。殺し屋は、姿を隠して匿名で愛する女性に花を贈り続ける。あるとき、女性は別の男性と偶然知り合い、花の贈り主は彼だと勘違いして愛し始めてしまう。殺し屋は、違うんだ! お前が愛すべきなのは本当は俺なんだ! と身もだえするわけだけど(話の展開として身もだえすべきだと思うんだけど、実際の映画ではあまり身もだえしていない)、彼女は自分の愛情を受け止めた上で(勘違いで)他の男を愛しているのだから、その愛をとめることは自分への愛をとめることになってしまう。この矛盾が面白い。
もう1つのテーマは、女の勘違いによって演技し続けなくてはならなくなった2人の男の話。他の男を自分を愛してくれている男だと勘違いして愛してしまう女、彼女は概念的には自分を愛しているのだから、それは本当は俺なんだと言うわけにはいかない男、本当は彼女が愛しているのは自分じゃないのに、あ、それ僕じゃありませんと言って彼女を失ってしまうことを怖れる男。彼女の勘違いを正せば、彼女との関係は終わってしまう。だから2人とも本当のことを言うことができない。そこが面白い。どちらも面白いテーマなのだけど、考えてみると全く違うテーマ。思い切ってどちらかのテーマに重心を乗せてしまうべきだったと思うのだ。
『デイジー』には「アナザーバージョン」というのがあって、そちらは殺し屋の視点をメインに物語を描いているらしい。つまり、男の片想い路線ね。というわけで、「アナザーバージョン」に期待(だけど、こうやってまた期待が高まり過ぎてガッカリしてしまうんだろうなぁ)。
今日の一言韓国語は「
첫사랑(チョッサラン)」=「初恋」。「初(チョッ)+愛(サラン)」なのだと思う。ちなみに、ファーストキスのことを「
첫키스(チョッキス)」と言っているのを聞いたことがある。
→
「デイジー」公式サイト(日本語)
→
「デイジー」公式サイト(韓国語)

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