『リンダ リンダ リンダ』
山下敦弘 (監督)
ペ・ドゥナ (主演女優)
香椎由宙 (主演女優)
前田亜季 (主演女優)
関根史織 (主演女優)
2005年制作
☆☆☆
凄く変な映画…。矢口史靖監督の『
ウォータボーイズ』『
スウィングガールズ』みたいな感じの青春映画なんだと思ってたんだけど(そして言葉で表現すれば確かにそういうことになるんだろうけど)、まさかこんな感じの妙なテイストの映画だとは想像しなかった…。ある意味、学生映画みたいな雰囲気がある…。

お話としては、高校3年、最後の文化祭の3日間の物語。文化祭前日に女子高生バンドが空中分解。ヤケクソで偶然通りかかった韓国人留学生に声をかけ、(3日で出来そうだという理由だけで)ブルーハーツのコピーバンドをやる、という話(「リンダ リンダ」「終わらない歌」「僕の右手」の3曲を練習する。ちなみに彼女らの演奏を含む
企画モノCDも発売された)。文化祭という非日常的世界を描いた話、と言っていいのかなぁ…?
その非日常の世界を旅するのが、韓国から来た地味な留学生を演じている韓流女優のペ・ドゥナ。この映画に出ている人でちゃんと演技しているのは彼女くらいなんじゃないかと思う(2度観たら、前田亜季はそれなりに演技していることがわかったが)。文化祭期間という非日常性が、外国人にとっての日本という非日常性によって上手く表現されている。
監督まだ28歳だったそうで、妙な感覚の映画を撮る人、といった印象。ストーリーもクソもないのに、どういう映画だかよくわからなくて2晩連続で観ちゃったよ。この映画の最大のポイントは、まさに矢口映画的な題材でありながら、矢口映画のTV的・マンガ的なエンターテイメント性がまるっきりない、というところ。盛り上がるべきところで盛り上がらない、盛り上げるべきところで盛り上げない、のだ。矢口映画が徹底的に「いかにも」というベタな展開を繰り出し続けるのに対して、そうしないの。だから、あまりにも普通。普通こんな映画ないぞっていうくらい普通。ちょっと、この監督の他の作品も観たくなってきた。(この映画について調べていたら、この映画について議論している面白いページを見つけた。
ここ。僕は、やっぱり映画というものに関しては、出来上がったものを観て、面白かったとか、つまらなかったとか、こうだったらもっと良かったのに、というようなことなら書けるけど、映画というものをどうつくるか、どう撮るか、ということについては考えたこともない人間なんだなぁということがよくわかった。)

ちょっと国際交流について考えたこと。ペ・ドゥナ演じる韓国人留学生は、文化祭で(おそらく社会科の先生と)韓国文化紹介の展示を担当しているのだけど、お客さんなんて誰も来やしない。彼女はそれまで付き合いのなかった軽音楽部の3人の女のコと一緒にバンドをやることになって、初めて日本人の学生と心をかよわせるようになる。彼女に対する呼び方が「ソンさん」から「ソンちゃん」、そして「ソン」へと3日間でかわっていくのが面白い。
僕がこれこそ国際交流だよなぁと思ったのは、彼女に一目惚れした男のコが彼女を備品室に呼び出し、愛の告白をするシーン。彼、韓国語の勉強をして、韓国語で自分の想いを伝えようとするんだよ。これが国際交流ってものでしょう。何と言うのだろう、国際交流というものの本質は、ただの友達同士の付き合いやただの恋人同士のやりとりを誰とでもする、というところにあると思うのだ。それがナニ人であれ、自分の想いを相手に伝えようとする、ということでしょう。
今日の一言韓国語は「
모르겠어요(モルゲッソヨ)」=「わかりません」。この映画の中では、バンドメンバーの変遷を聞かされ「うん、うん」と答えていたペ・ドゥナが、「ソンちゃん、本当にわかったの?」と追い討ちをかけられ、「うん」と答えた後ひそかに「モルゲッソヨ」と頭を抱えるというシーンがある。
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「リンダ リンダ リンダ」公式サイト
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ペ・ドゥナ公式サイト

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