『間宮兄弟』
森田芳光 (監督)
佐々木蔵之介 (主演男優)
塚地武雅 (主演男優)
常盤貴子 (女優)
沢尻エリカ (女優)
北川景子 (女優)
2006年制作
2006年公開
☆☆☆

30代・独身・彼女ナシ、兄・明信と弟・徹信の、「マニア兄弟」ならぬ間宮兄弟の話。世間とズレてるオタク兄弟を描いた、テレビテイストのコメディだろうと思っていたら(DVDパッケージの雰囲気はそんな感じだと思う)、予想していたのと少々テイストが違った。考えてみれば、監督が森田芳光だもんなぁ…。「期待しないで観たら、結構面白かった」の典型例。原作は、江國香織の
同名小説。
この映画、レビューを書くのが結構難しい。何でかって言うと、2回観たのだけど、僕には何を描いた映画なのか実はよくわからないのだ。基本的には「家族の日常生活」を描いたホノボノ系ホームドラマだと思うのだけど、兄弟に大きな危機が訪れるわけでもなく、大仰に「家族の絆」だとか「兄弟愛」を描いた映画でもない。兄が出張先(仙台)のホテルから弟(東京)に電話をかけて、電話の相手は奥さんでも恋人でもないのに、「はぁ…、しかし…、1日の終わりに、こうやって電話ができるヤツがいるっていうのは…、いいな! 落ち着く!」と独り言ちる、そういう映画。弟に電話かけて落ち着いちゃってていいのか?と思いつつも、ついそれで落ち着いちゃうという、そういうテイストの映画。

難しく言えば、家族の安定性だとか衝撃吸収力を描いた映画なのだろう。間宮兄弟は坦々とした日常をおくっているけれど、全く同じことを毎日毎日繰り返している、というわけではない。ちょっとした変化は常に起きている。だけど、その変化は家族の衝撃吸収力によって吸収されてしまう。だから、兄弟には何の変化も起きていないように見える。変化は起きているのだけど、それが吸収されてしまうのだ。これが恋人や夫婦だとそうはいかない。一方に起きた変化は他方によってむしろ増幅されてしまう。兄の同僚夫婦は離婚してしまうし、兄弟主催の「浴衣パーティー」で知り合った大学生カップルは別れちゃうし。何故か家族だとそうはならない(いやまぁ、「家族の崩壊」を描いた日本映画ってのも数多いですけどね)。だけど、兄弟にも本当に何も起きていないわけじゃない。2人の生活は閉じたツマラない均衡に見えるかもしれないし、他人の不幸も羨ましく思うこともあるけれど、あの2人にだっていつか幸せは訪れる。それは本間姉妹(馴染みのレンタルビデオ屋のアルバイトのおネエちゃんとその妹)にも当てはまる。妹の言う通り、「おでんパーティー」には行くべきだと思うぞ、直美ちやん!
僕は東京に住んだことはないのだけど、東京ってこういうイメージ。大都会なのに、道は狭いし駅は貧弱。自分が世界の中心にいるだなんて誰も感じられない。

最近のコメディ映画にしては妙に画面が暗い。それから、映画っていかにも「ここでキャプチャーして下さい」的なキメ画面があるもんかと思っていたのだけど、この作品にはそれがあまりない。それが逆に僕には新鮮で、これが日本映画の画面というものなのかなぁと興味深く思った。笑いのセンスも近頃のコメディ映画とは随分違う。こっちの方が僕には好み。コメディパートを一手に引き受ける「声が大きくウルサい」高嶋(兄)が吉。彼の出演シーンは効果音を聴いているだけで笑ってしまった。
間宮(兄)を演じる佐々木蔵之介って、ついこの間まで全然知らなかったのだけど、売れっコなのだろうか? 「
サマータイムマシン・ブルース」(本広克行 監督 2005年)にも「
虹の女神」(熊澤尚人 監督 2006年)にも出ていた。もともとは小劇場系の人なのだろうと思う。間宮(弟)を演じる、お笑いコンビ・ドランクドラゴンの塚地武雅、映画初出演ながら頑張ってると思う。何と言っても顔がいい! これで演技力がつけば、将来、小倉久寛みたいになるんじゃないか!? ちなみに兄弟の母親役は何故か中島みゆきで(笑)、中古のロールスロイスを乗り回している。

2人が通うレンタルビデオ屋のアルバイト店員を沢尻エリカが演じている。彼女、『
パッチギ!』(井筒和幸 監督 2004年)でしか観たことなかったのだけど、まぁやっぱり(おでこが)可愛いよね。例の「別に…」騒動以来あんまり良い印象をもっていなかったのだけど、映画の中では、兄弟の「味」を聞き分けられる、わりといいコでした。その妹役の北川景子も意外と吉。まぁ、一番印象に残っているのは、変な小学校教諭、常盤貴子なんですけどね…(笑)。
僕は江國香織の小説は1つも読んだことがない(そもそも江國香織って谷村志穂と区別つかない。どっちも読んだことない)。文庫になっているようだし、ちょっと読んでみようかな(2008年01月19日追記:
読みました)。
→
「間宮兄弟」公式サイト

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