アメリカに住む様になってから、
思い返せば、日本では絶対にお目にかからなかった
ものすっごく失礼な人達によく遭遇する。
ユタ時代のごくごく初期には、毎日遭遇していた様な
気持ちになっていたが、時間が経つにつれて慣れて来るのか、
それとも、言葉が分る様になる事で相手の意図が
それなりに理解できるようになるのか、
それ程毎日とは思わないようになった。
カリフォルニアに来てからは私達の方がマジョリティーかな、
と思う位に色んな人種がいるのもあって、
更にそういう人に出会う機会は軽減したと思うのだが、
しかし、時々、ほんのごくたまに、ユタでもお目に
かからない程に失礼千万な人間に出くわす事がある。
ユタで失礼な人間というのは、そもそも外国人に慣れて
いない所から始まる失礼さで、自分がこの人をあからさまに
陥れようという思いから到る失礼さではない。
どういう風に接して良いか分らない。
同じ人間とは到底思えない。
どうやら、そんな無知から始まるもので、
本人に悪意はないから、腹が立っても持って行き場がなく、
私の方が大人になるしかなかった。
だが、ここはちと違う。
たまぁ〜に出会う失礼千万人間は、十中八九が白人だ。
時々中国人もいるが、それはまた違うんだなぁ。
あれはあの人達の国民色で、故意にどうこうでは決してない。
しかし、白人のイヤキチ野郎達は、ある意味故意なのである。
つまり、
「俺/私は白人。あんたは有色人種。跪きたまえ」に
とっても近い感情が根底に流れている様に思えてならない。
町の中で、車の運転中、時としてそういう勘違い野郎に
出くわすが、そいつらは、私が小さくて大人しそうな
黄色いアジア人だと判別すると、途端に元気になる。
そうして、とてもとても失礼な事を言ったりしたりするのだが、
そのほとんどが我が侭の極地で、
その上、もし私が黒人のでっかいオヤジだったなら、
絶対に言ったりしたりされる事のない言動に違いない、と
思う様な事なのだ。
ある日の事でした。
私は息子を連れて、矯正歯科に行かねばなりませんでした。
二車線の道を走っていましたが、前に一台ノロノロと
35マイルの道を25マイルで行く車がありました。
私達はかなりビハインドで、後5分の内に歯科に着いている
必要があったのですが、そこからはどういう風に見積もっても
10分位はかかりそうです。しかも、25マイルの車の
後ろではもっと時間がかかります。
で、後ろ、横を確認後、追い抜くために横の車線に移りました。
が!なんである。
ここにお住まいの方なら、どなたも経験済みだと思うのだが、
追い抜かされると思うと、途端に加速するアホがいる。
そうして、この時もそういう人間で、
私が隣の車線に出て、加速した時点で、
40マイルまで加速した私が抜かす事を断念する程に
あちらも加速されたのである。
信号が赤の交差点に来たので、私は停まりました。
私の前には一台車がおりました。
で、信号が青になったので、また走り始めた訳ですが、
私の前の車はとても調子良く、40マイル位で走っています。
私も前の車に調子を合わせて走っていました。
で、懸念の車ですが、私の横、ちょっと先を
食らいつく様に走っています。
が、この時点で私は何もこの車に注意を向けていませんでした。
と!その時!
このアホがどういう訳か、私達の方へ車を寄せて来たのだ。
ブリンカーも出さず、しかも、下手は運転手にありがちの、
車線変更する時にグッとブレーキを踏んだりするあれだったので、
一瞬何をしたいのか私は分らない程だったのが、
すぐに元の車線に戻ったので、
「ああ、車線変更したかったのかな」と思ったが、
そのおばはんは何故か?私のせいで車線変更できない、と
思い込む事に決定したらしいのだ。
そんな、車が団子状態の所で車線変更せずとも、
団子状態がなくなった所で車線変更すれば良いし、
それに、ブリンカーも出さずに急激にスピードを落しつつ
私の方ににじり寄られても、よけるのが精一杯というものである。
正直、にじり寄られた時には、
「この人、飲んでるんかな?」と思う位だった。
ノロノロ走ってるかと思えば、気違いのようにスピードを出し、
で、突然減速しつつのにじり寄り攻撃。
で、前の車について調子良く走って行くと、
その車は自分のした減速から立ち直るまでに、私に抜かれた事に
腹を立てるとクラクションを長く長く鳴らした。
が、その時点でも何故、その車がクラクションを鳴らさねば
ならなかったのか、一体どの車が鳴らしたのかも
私は知らないでいた。
で、その先の交差点で横に並ぶと、
その車からブルネットの白人の中年おばばが降りて来て、
私に指を立てながら何か喚くではないか。
なんなんじゃ、このおばはん・・・ってな感じである。
太っているので、到底そうは思えないが、しかし、
きっと年は私よりも若い位である。
「私をあなたの前にいれなかったでしょっ!!!」
・・・いや、入れなかったんじゃなくって、
入れれなかったんですよ、あんまり危険で。
「どうして!?どうして入れなかったのよっ!!!」
・・・って言うか、あんた、私が黒人のでかいおばはんやったら、
絶対にこんなとこに降りて来て、文句言わへんでしょ?
私やから、今言うてるよね。
胡散臭い女である。
自分と言うものが、きっとないに違いない。
コロコロと相手によって態度を変え、
安穏と今迄生きて来たのだろうか。
こんなどうでも良い事で、しかも自分が悪いような事を
外国人だと思えば平気で言えるのだ。
ここでかけても良いが、この女、同じ白人のおばちゃんでも、
ここまでは出来ないのである。
ここはアメリカ、誰だって危ないと知っている。
いつガンで撃たれるか、なんて事は普通に思って生活せねば
ならん場所なのだ。それが、無防備に車の外に出て、
指を立てて、両手を広げて、と好き放題私にしている所を
見ると、いかにも私は無害に見えるらしい。
私も息子も無表情にその光景を諦観している風なので、
おばはんの勢いも少々小ぶり化してきた。
と、その時、信号が青に変わった。
常々、私は正直に生きて行きたいと思っている。
良い人でいたい、という希望を抱いて生きている。
だが、そんな希望は、私という不出来な人間の前には、
芥子種にも満たない大きさだったんだ、と
思い知らされる瞬間がある。
いや、正直が取り柄の私、ここも一発正直に生きなあかん、
正直に「今こそ芥子種化する時よ!」と鬼になる事がある。
それが良い事か、悪い事なのかは後で反省するが良い、
今は立ち上がるんだ、立ち上がるんだぁ、
立ち上がるんだよぉ〜〜〜、リジィ子ぉ〜〜〜〜!!!
・・・と、なる時がある。
もちろん、無表情に聞いてはいても、この短気なあたくし、
「そうなんだぁ、ごめんねぇ〜・・・」などと可愛げのある
気持ちで聞いている訳がない。
沸々と「立ち上がるんだリジィ子コール」を胸の中に燃え上がらせ、
怒りの丈を増幅させつつ聞いているに違いない。
しかし、この女はそんな事露とも知らないのだ。
ただ、
「ハハァーーーン!怒る事も出来ないイエローモンキーちゃん!」
とかなんとか思って言いたい事言い放っているのじゃ。
で、私は信号が青に変わったのを認めると、
突然怒り狂った鬼夜叉のような形相で、
「一回死んでこいっ、このくそババァっ!」とめっちゃお上品に
ののしり、そのままその太った女を路上に放置して
ブブブと走り去ってやったのでございます。
・・・長男は大爆笑であった。
「ああ、なんで黙ってるんかなぁ、何も言わへんのかなぁ、
と思ってたけど、言うなら絶対これだろうなぁ、と言うのを、
ママ、言ってやったね」
「うん。ママ、頑張った?頑張ったよね?」
「うん、上出来だよ」
後で夫にその時の事を話すと、
そういう状況というのは多々あるけれど、
普通はお互いにごめんねと心の中に思って、
通り過ぎ去るものだがね、と言った。
「そうやんなぁ?変わってるよね」
「我が侭やねん。もう死んでも治らん。
一生そうやって、自分より弱そうなものを見つけたら、
その者のせいにして寄生虫みたいに生きて行くねん」
「ああ・・・!でも!でも!
私、もっと言うたったら良かったかな!?」
夫が言うに、相当その人はこたえているだろう、と。
「だいたいね、それまで無表情に聞いていた人が、
鬼みたいな形相で・・・あ、ちょっとあんた、
その時言うた時のん再現してみて」
「『一回死んでこぉい、このくそババァー』
・・・こんな感じやったかな」
「ゲハハハ、そら恐ろしかったと思うで。
大人しい、文句を言い返す事も出来へんと思ってた人間が、
突然そんな形相で、どう考えてもその人間の母国語で
罵りよった、って分る訳やん、そら衝撃やったと思うで」
「はぁ・・・。ぼん君もな、上出来やったって
言うてくれてん」
「そら、ぼんも客観的に見てた訳やろからなぁ・・・」
それから、相手の立場になって考えてみた。
自分が公然と自分より下と見なした人間から
思いっきり罵られるってどんな気分なんだろう、と思った。
だいたい、人間対人間でそういう風に見た目で
優劣をつける事って、一体何なんだろう、それこそ
どんな気分なんだろう、と思う。
理由のない優劣である。アメリカだけじゃない、
日本でもきっとどこの国にも一部の人間が抱く
人間特有のつまらない感情だ。
かと言って、この女性が自分を省みるとは思えない。
ただ、きっと、
「今度から車から降りる事はやめておこう」位に
思うのが関の山だろうな。
で、私が反省したかどうかですが、しておりません。
死んでから、死人の国の門番に、
「あんた、こんな事したでしょう」とこれを見せられても、
「私、頑張ったでしょう?ねぇ、頑張ったでしょう?」と
きっと門番に食らいつくに違いない、と思ったので、
反省しない事にした。
ま、つまりは、反省する程、私は人間が出来ていない、
まだまだという事なのだね。
と言う事は、ものすっごく低レベルな争いを
ここに暴露してしまった、って事なんすなぁ。
アハハハハハ・・・・・・・・orz

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