テニスのミックスダブルスのトーナメントに出場する様になって、
ただ単に草テニス的にやっているだけなら、
永遠にわからなかっただろう事がわかり始めて来た。
そもそもは、私と組んだパートナーのこんな戸惑いの声から始まった。
「女性と組むのは本当に難しい。それってどういう意味なのかわからない」。
私と組んだパートナーは私よりレイティングが1.0も上だ。
組んだ二人のレイティングの合計が7.0以下ならOKな大会だから、
彼と私が組めば合計丁度7.0で、とても都合が良い感じなのだ。
しかし、思うに、男性の方はなかなか大変だと思う。
試合に勝つ、という意識も然る事ながら、自分が格下の女性をリードしなければ
いけない、という意識も合わせて持つ事になる。
それは格下の男性と組む時とは絶対的に違う訳で、
エモーショナルになりやすい女性相手の事、精神面でのサポートも必要になってくる。
と、まぁ、そんな風に思っていたんだな。
所がだ!
精神面でのサポートが、どうやら彼の思いも寄らない方向でなされた事に
驚いているらしいのだ。
その我々の試合で最初の大きなミスを犯したのは、彼の方だった。
彼は思ったらしい。
「(リードしてあげねばならぬ自分が)こんな決め球をはずしてしまうだなんて。
信じられん。ああ、パートナーのリジィ子はさぞかしガックシ来ている事だろう」。
そして、恐る恐る私の方を振り返ると、私は笑っていたのである。
笑っているだけでなく、こうぬかした。
「ふはははは。ナイスミ〜ス!これで私もミスがしやすくなったわ!」。
その時の事は、私もよく覚えている。
この言葉は、慰め半分、
しかし、正真正銘本当にそう思っている正直な心根半分の言葉だ。
私の心内は、その時、「とにかく出来る限りボールを取って繋ごう」に終始していた。
なるだけミスしない様に、それが私の出来る最大の彼への奉仕だ。
そもそも3.0だから、出来る事はもの凄く限られている訳で、
そうは思っていても、バカみたいなミスを連発する事だって、
今までの経験上、いっくらでもある訳だ。
しかし、その『出来る限りボールを繋ぐ』というのが私の緊張をほんの少し、
過度にしていたのだ。このちょっと突っ張った感じに心地悪い緊張感。
うんと気になる程ではないが、まるで寝床のシーツに数本皺が寄っている様な、
そんな感じの居心地の悪さがあったのだが、
彼のミスでそれが一気に解消。
「そうだ。自分より格上の彼だってミスするんだもん、私がしないでいられる訳がない。
慎重に越した事はないが、でも、そんな不可能に捕われないで、
のびのびやろう!」と思えたのだ。
で、先のコメントになったのだが、
どうやら、言われた方の彼は「目が点になってしまった」らしい。
「わからん、女性の心理がわからん。男なら、『ドンマイ、次行こう!』だ。
でも、『ナイスミス』って、何?『私もミスしやすくなった』って何?」。
悪い事をしたな、と思うが、その話しを他の女子にしたら、
「え?何がおかしいの?それってとても愛溢れる言葉じゃない?」と共感。
どうやら、何かが男と女の間で違うらしい。
しかも、その違いはグランドキャニオン並の深い溝の如く。
先週の試合は私は出場せず、応援に駆けつけたのだが、
その時に、私の友人とペアを組んだ男性が、
「いやー、僕、実は緊張していましてね」と言うではないか。
すると、すかさず、私の友人が、
「それ、その場で言って下さいよ、言って下さらないから、
私、ずーーーーっと過度に緊張していたじゃないですかぁ!」と叫んで爆笑となった。
が、驚いたのはその男性で、
「えぇぇ!?それ、言っちゃっていいの?僕が緊張してるって言ったら、
ガックリ来ないの?」と不思議がる。
しかし、そこにいた女性全員が、
「いいえ!(断言)そんな事はありません。それは言って頂かないと困りますっ!
パートナーも緊張しているとわかると、一気に緊張がほぐれますっ!
『私だけじゃない』という仲間意識が、緊張をほぐすんですっ!
言ってもらえないと、自分だけが緊張してるんだって、ずっと緊張しっぱなしになりますっ!」。
男性諸氏がガックシ来たのは、言うまでもない。
男達はいかにも男前だ。
男前に徹しようとする。
しかし、女達は男前の後ろに見える本当の男達をしっかりと見据えていたいのだ。
いや、すでにもう、見据えているのかもしれない。
もちろん、その場にいた男性達に、
「これからは正直に言うんだよ」と約束させたのは、言うまでもない。
なんなんだかぁ、男達の方が余程、紆余曲折した心理に苛まれている、と
思ったのは、紆余曲折に慣れ親しんだ女の私だから思う事なのだろうか。
ま、私もこれからは、ちぃーっと男性のそんなナイーブな心理に気をつけて
物を言わねばならぬ、と、女そろそろ四捨五入したら五十にして思い到ったのである。
ま、無理でしょけど。(殴)

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