日本経済新聞8/18夕刊に掲載された坂東眞砂子氏のエッセイが話題になっているようなので、ちょっと時間つぶしに図書館へ寄ったついでに、原文を読んでみた。
ネット上では坂東氏の文章が細切れに引用されて報じられ猛烈な非難を浴びせられているが、紙面で落ち着いて読んでみると、それなりに納得できる考え方だな、という感想を持った。もちろん行動としてはかなり異常だし、そもそも(親猫を)飼おうと思うところからしてわたしには理解不能なんだが、彼女自身の論理は通っている。
報道文などと違い文芸作品としてのエッセイには細切れ引用では伝わらないニュアンスがあって、そこがエッセイの本質であり、坂東氏のエッセイはその点で優れた作品だと思ったが、メディアを、あるいはネットを通すと、かなり話が変わってきてしまうようだ。
この件について、猫好きの人はどうやっても騒ぐだろうが、そのあと騒ぎを聞きつけて非難している人たちは、細切れ引用ではなく原文に触れてみてはどうだろうか。読んでみた上で作家の覚悟というものを感じ取れないとしたら、それはお互いにとって気の毒な話ではあるが。
以前わたしは、これはポルノに関してだが、「どのような表現も表現としては許される」という意味のことを述べた。表現として許されるということと社会的に非難を受けることが別であるという考えは、なぜか理解されづらいようだが、坂東氏がこの優れたエッセイを公表したことに、またそれに関する非難を受け止めると表明されたことに、敬意を表する。

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