■ハーモニー(伊藤計劃)
このハーモニーという作品のテーマは百合で
ありユァハ、トァン、キアンの3人の少女の
物語です★
小説のほとんどをユァハ、トァン、キアンの
3人のシーンが占めているからです。
『ハーモニー』は『百合姫』でマンガ化も
決まりました★
(注 この記事を書いた2013年、時点の情報。
2015年にニュータイプで連載が始まりました)
ハーモニーは難解な小説で見た人によって幾通り
もの解釈が可能な作品です。
作者の伊藤計劃氏は押井守が好きな
ようで「見たい映画は?」の質問に
「押井守のガルム戦記」と答えています。
なので難解さは押井守に似ている気がします。
ではいきます。
(注 その後、『ガルム戦記』の映像化が決定)
そして伊藤計劃の3作品が映画化決定。
2015年、10月より順次公開。
ところで以前、『あさりちゃん』の
室山まゆみ先生がファンの会報に
『ハーモニー』の絵を載せました、
という話を『百合な日々』の雨傘さまに
していた方がいたのですが・・・
どんな絵だったのでしょうね?
■ハーモニー(調和)
ハーモニーの世界はマトリックスやリベリオンの
ような閉じた管理社会です。
例えるなら、
コードギアス、ガンダムSEED、ガンダムOO、
などの悪役が言う、
「わたしが世界を1つにすれば、みんな幸せになる」
な理想がイヤ〜な形で実現された感じでしょうか?
病気がほとんど放逐されているんですが…
個性やプライベートは存在しません。
なぜなら共同体意識?とかいうので個人情報は
晒され皆で共有しているからです。
プライベートはエッチな意味でマイナスな
イメージの言葉になってますし。
このような世界では個性が生まれることは
ありません。
社会全体が、どこか閉じた感じです。
ハーモニーは『調和』という意味ですが
どこか皮肉めいた響きがあります。
以上はおおまかな世界観の説明です。
この閉じた世界で3人の少女たちが
出会うことに意味があるのです。
■御冷ミァハ
御冷ミァハ、霧慧トァン、零下堂キアンの3人は
運命の出会いをします。
ミァハはトァンとキアンに様々なことを教え
導きます。
マトリックスのモーフィアスのように。
「自分のからだは自分のもの」
少女たちは漠然と、そしてあまりにもささやかな
抵抗をします。
それは『自分』を保つ事。
ですが個性もプライベートも存在しない
均一の社会で『自分』というものを保つ手段は
無いに等しいです。
それだけでなく『個性』を持つこと自体
この世界ではタブーでしょう。
この社会を嫌った少女たちはジサツという最悪の
逃避を選択してしまいました…。
社会に追い詰められた結果でしょう…。
(少女という幼い年齢故でも…)
しかし霧慧トァン、零下堂キアンはシなず…
13年後トァンとキアンは再会し…
そして1人シんだはずの御冷ミァハの影を追う様に
トァンは旅へ出ます。
百合な見所がぜんぜんない
ぢゃないか?
ご安心を、あります★
御冷ミァハは霧慧トァン、零下堂キアンの2人に
様々な事を教え導きました?
なぜ?
それはミァハはトァンとキアンの2人が大好き
だったからです♪
ではなく…もっと神秘的なような…。
ミァハは『MONSTER』のヨハンのような感じ
でしょうか?
出会った時にミァハからトァンへ、
「きみは私と同じ素材でできているんだよ」
と言います、これはもう告白ですよね♪♪
ミァハはトァンの手の甲にキス♪
をするのがとても良いのですが♪
文体もドキドキするくらい良いんです♪♪
どうもミァハはトァンとキアンを自分と同じ
存在と見ていたように思えます。
(同じ素材と言ってますし)
他にも「ミァハの後継者云々〜」の会話もありますし。
御冷ミァハ=霧慧トァン 御冷ミァハ=零下堂キアン
ですが話が進むに連れて「ミァハ=トァン」で
同じだけど、
「ミァハ≠トァン」で同じじゃない!
なストーリーになってきます。
これ『魔法の天使クリィミーマミ』
の展開と同じですよね(笑)
クリィミーマミも「森沢優=マミ」だけど
「森沢優≠マミ」な話になってくるんですよね。
「優はマミだけどマミは優じゃない、みたいな」
クリィミーマミは伊藤和典や高田明美など
後のパトレイバーのスタッフがいますし、
なにより
星井守とかいう押井守そっくりの
キャラがいます(笑)
押井守につながりました★
『魔法の天使クリィミーマミ』も押井守みたいな
けっこう不思議な話がありましたよね★
トァン「なんといっても、女の子は
魔法が使えるんです」
そっか★そういうことなんですね★
今はマミというと、この方を思い出しますよね♪♪
ちなみにクリィミーマミや
パトレイバーでシナリオを書いた
伊藤和典さんがツィッターで、
伊藤和典 @Ito_Kazunori 2011-07-03 03:08:41
『魔法少女まどか☆マギカ』をニコ動で視聴中。なんじゃ、こりゃ!もうね、おっさん10話で号泣ですよ。きゅんきゅんくるわ。もったいないから、今日はここまで。
伊藤和典 @Ito_Kazunori 2011-07-04 00:57:00
「マミったらクリィミーだろうがよ」と思った時期もありました。もう巴さんでいいです。最終 12話、静かに涙を流したよ。『まどか☆マギカ』もう一周観るな、たぶん。
と呟いたのですがこの後、
伊藤さん「上司から注意された」と
ツィッターで呟いてました(笑)
上司「そういう事はあまり呟かないように」
とか・・・(^-^;)
私は『まどか☆マギカ』は好きですよ♪
■霧慧トァン 零下堂キアン
ユァハ、トァン、キアンの3人が心中未遂を
起こしてから13年後
ユァハとトァンのドラマを語る前に
トァンとキアンのドラマを語ります
ハーモニーの前半はトァンとキアンを中心に
描かれてますので
トァンは監察官として世界中の紛争地域を飛び回って
います
そしてミァハの影響からトァンは酒を飲み、タバコを
吸い肌も日焼けしています
久しぶりに帰国したトァンはキアンと再会
します
トァンとキアンの食事と会話のシーンで
さりげなく2人の絆や仲を描いています。
ここにはいないミァハの存在も浮かんできます
思うのはトァンとキアンの2人の行動や考えには
今もミァハの存在が大きいということ。
『私達のカリスマ』『御冷ミァハ万々歳』
と呼んでるくらいですし。
ここにミァハがいないことに寂しさを感じている
一方で2人のちがいもよく出ています
トァンは酒やタバコを吸い肌も日焼けしてますが
キアンは今では普通(?)の女性になり…
そして昔ミァハ、トァン、キアンの3人でいた頃の
回想シーンもあります
今ではトァンとキアンは違う道を歩んでいる
訳なのですが…
ここで、
「なぜトァンが肌を日焼けしてタバコを
吸っているのか?」ですが。
おそらく映画『デモリションマン』の
ようなことがしたかったのでしょう。
(ちなみに、この映画シュワが大統領候補に
なっているというジョークがありますw)
『デモリションマン』は、優秀だけど
壊し屋のあだ名を持つ刑事スタローンが
冷凍保存されて、あまりにも清潔で
クリーンな未来社会で解凍されて復活する
映画です。
そのクリーンな社会に当然、
刑事スタローンはなじめません(笑)
そのあまりにもクリーンな社会にも
なじめない連中がいてレジスタンスを
してるのですが、刑事スタローンは
レジスタンスに共感します。
そして肉を食べたりしてる内に、
(クリーンな社会には肉もソースもない)
刑事スタローンは、
「清潔すぎるより少し汚れてる方がいい」
とか言って、うまく締めくくります(笑)
つまり『ハーモニー』のトァンは
『デモリションマン』のようなことを
してるのかもしれません。
クリーンで清潔で、
でもどこか閉鎖した社会で
トァンがタバコを吸ったり肌を日焼けしたり
するのは彼女なりの、ささやかな抵抗かも
しれません。
ですが、トァンは「生きている」という実感
を得ている気もします。
『ストレンヂア』の、このセリフを
思い出します。
「痛みがある方が、生きている気がする」
『ハーモニー』のキャッチコピーは、
「私の心が、幸福を拒絶した」
ですが、この幸福というのは管理社会の
幸福であり、トァンの心は彼女自身の手で
選択したものであるが故に、その幸福を
トァンは拒絶したのでしょう。
また、今でもトァンの心の中には
ミァハがいて、彼女が教えてくれたことを
トァンは大切に守っているのかもしれません。
ミァハのおかげでトァンは、
自分のからだを、こころを
もつことができたのでしょう。
やはり『ハーモニー』は
トァン、ミァハ、キアンたち
3人の百合だと思います♪
自分の未来は自分のもの
自分の意志で変えることもできる
映画『マイノリティ・リポート』より
伊藤計劃の映像化、いい機会なので
2013年に書いた『ハーモニー』の記事に
画像や文章を追加するなどして再編集
しました。
いずれ『ハーモニー』のレビューの続きや
『虐殺器官』の記事もUPしようと思っています。

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