本日来季新加入選手として、立田悠悟の清水エスパルストップチームへの昇格が発表された。
ジュニアユースからの6年間、エスパルスオレンジを背負って戦ってきた長身CBが一足先に夢の舞台へ足を進める。
ジュニアユースから清水エスパルスへ。
当時の悠悟は今の誰もが抱く長身CBというイメージにはほど遠く、他の選手との違いもそこまで目立つ方ではなかった。
実際入団当時の身長は159cm。
今までの昇格選手は基本的に常に上級生の世代への飛び級で経験を重ね成長を遂げていくパターンが常であったが、悠悟に関してはジュニアユース時代は飛び級とは無縁の道を進む。
1年生のチーム始動時は選手をたくさん試す時期ではあるが、その状況下で絶対的主力というわけではなかった。
悠悟世代のジュニアユース時の監督は岩下潤監督。
今年今現在JFAプレミアカップ、日本クラブユースサッカー選手権と2冠を達成した指揮官。
岩下監督の下歩んだ3年間。
試合を重ねるごとに悠悟はレギュラーポジションを掴む。
中学1年生大会ではクラブの部準決勝で宿敵ジュビロ磐田に敗れ、ベスト4。
2年生に上がり、豪や陸、昇、皓平など続々とU−15に合流していく中久保山監督からはお呼びが掛からず自分の世代で戦っていく。
悠悟の身長が伸び始めたのは2年生あたりから。2年生の登録身長が168cm。3年生の登録身長が178cm。
写真を探していても、2年生になると急激にデカくなっている。
入団当初から約20cm伸びている。
そしてジュニアユース最終学年。
日本クラブユースサッカー選手権では東海大会を制し東海チャンピオンとして挑んだ全国大会でガンバに準々決勝で破れベスト8。
東海リーグは2位で終え、高円宮杯では1回戦で強豪横浜Fマリノス追浜と対戦。
0-3と完敗ではあったが、この大会のあと悠悟は初めて世代別代表のU−15日本代表候補に選ばれる。
ジュニアユース時代の後半、チームの屋台骨として確かな成長を遂げた悠悟はユースに昇格。
当時のユース3年生は北川航也世代。当然チャンスはそう簡単にやってはこない。
高校1年生のシーズンはプレミアリーグ1試合の途中出場だけに終わる。
そのリーグラスト2試合でやってきた市立船橋高校とのデビュー戦が衝撃的だった。
鈴木翔太に変わって左のCBに入った悠悟。パートナーは2年生の村松航太。
市船のFWにドリブルで仕掛けられ背中を向けてくるくると振り回される。
この1プレーしか記憶に残っていないほど、衝撃のデビューだった。
3:30〜
0−3で負けたことの悔しさよりも、来年どうなってしまうんだ・・・という絶望感を抱いて船橋から帰ったことを覚えている。
ところが、2年生になった悠悟がここからトップチーム昇格への道をぐっと現実的に引き寄せる活躍を魅せる。
そのきっかけがCBのパートナーを務める3年生主将の村松航太との師弟関係。
航太と一緒に戦った1年間が悠悟を変え、悠悟を成長させ、逞しくなった。
闘将航太の常に横で、ハイボールを跳ね返し、長い足でボールを狩り、と常にチャレンジし続けた1年。
そのプレーの裏側には、いつも航太がカバーしてくれる、だからどんなボールにもチャレンジできるという絶大な信頼関係があった。
夏のクラ選。Round16でベガルタ仙台とのPK戦。
サドンデスで悠悟がGKに止められて負けた。
その長身を折り曲げ小さくなった背中をチームメイトは称えた。
この悔しさが今年のクラ選FINALにチームを推し進めた一因であることは間違いない。
3年生が卒業した直後の練習。
たまたまジュニアユースの試合前に行われていたユースの練習を見ていると、悠悟の声がピッチに響いていた。
それまで悠悟の声がピッチに響くところが気になったことは無くて、3年生が抜けたあとのチームを支える自覚が芽生え始めたのかなと感じた。
春先にはトップチームの鹿児島キャンプにも梅村豪とともに参加。
本人はまったく駄目だったと語ったが、その後もサテライトのTMなど幾度も呼ばれることになる。
3年生になった今年。
村松航太の背番号5を背負い決意を新たに下部組織最後の1年に挑む。
主将平松昇の代わりにゲームキャプテンを務め、名実共にチームの支柱になった1年が始まる。
今年はCBのパートナーを主に2年生の伊藤駿光、鳥居大人、1年生の監物拓歩と組み、1年前に自分が引っ張ってもらったように、今度は自分が引っ張る立場。
プレーでチームを鼓舞し、声でチームを盛り立て、平岡エスパルスの要である守備を支えてきた。
クラ選東海大会で優勝し、東海第1代表として挑んだ全国大会。
1度崩壊した守備を建て直し、FINAL進出。
結果は残念ながらFC東京に敗れ、涙の準優勝に終わってしまったが悠悟は大会MIPに選ばれ、その実力を全国区に知らしめる。
SBSカップには2年連続出場。今年はチームのキャプテンを務めた。
大会中訪れた2度のPKキッカー。
1年前群馬で外し、クラ選前最後のチーム練習でも外し、もう蹴らない方がいいんじゃないかなと思っていたPKを2度ともしっかり決め、昨日U−20W杯出場を決めたU−19日本代表にも勝利した。
プレミアリーグでも優勝戦線のギリギリのところに喰らいつく安定した成績をチームとしても残し、プレミアリーグ設立以来続くEASTオリジナル10としての残留も決め後輩に道を作った。
守備面では抜群の強さを発揮するその高さ、リーグ終盤には攻撃面でも持ち味を発揮できるようになってきてセットプレーでわかっていても止められないヘディングでチャンスを演出できるようになってきた。
悠悟の特徴は今年の登録身長189cmを存分に活かしたハイボールの対応。
空間認知能力に長け、ハイボールの競り合いは印象ではユース年代では負け知らず。
粘り強いDFで最後のところで体を張って足が伸びてくる。
ビルドアップにも不安はないし、ロングフィードでサイドに展開する能力も問題なし。
強いてウィークポイントを挙げるとすればドリブルへの対応。
まだそこに関しては世代屈指のドリブラーに対しては磐石とは言い切れない場面も。
大型CBとしてこれから鍛えられてどんどん成長していく姿が楽しみだ。
これから進むプロの道。冒頭「一足先に」と書いたのは、悠悟が昇格することがリスペクトする村松航太への刺激になるからだ。
順天堂大学で関東大学リーグで1年生にして開幕からレギュラーを勤める男の帰還を一番待っているのは悠悟。
北川航也の活躍が西澤健太や森主麗司らの刺激になっているように、下部組織で一緒に戦った仲間の活躍がみんなへの刺激になる。
もちろん今年昇格できなかった同じ3年生の仲間たちにとっても。
その大きな体にみんなの期待と夢を背負って、プロ世界で活躍する日を待ってる。
頑張れ立田悠悟!