本日、トップチームに清水エスパルスユース所属の伊藤研太、平墳迅、滝裕太の3選手の来期清水エスパルストップチームへの昇格が発表された。
トップチームの編成上の都合があるとはいえ、例年にないレベルで2種登録やトップチームへの練習参加、サテライトやリーグ、ルヴァンカップでのメンバー入りや出場と、今まで同じ三保で練習しながら目に見えぬ壁に苛まれ交流の少なかったトップチームとユースの間に大きな穴が空き、激流のようなシーズンとなり、ユースで結果を残せば上に呼ばれる循環が生まれた年の彼ら。
育成部と強化部のコミュニケーションがまだ満足に取れているとは言い切れないまだ発展途上の段階ではあるが、それでもエスパルス育成改革の序章としてその波にしっかり乗ってチャンスを掴み、トップチームへの昇格を勝ち得た彼らのエスパルスでの今後の活躍を期待せずにはいられない。
伊藤研太。
名古屋グランパスU-12から名古屋グランパス三好FCを経て、清水エスパルスユースへ加入。
多くの2種登録選手を擁したこの世代の中で、プレミアリーグ開幕戦に1年生で唯一ベンチ入りし途中出場し、一番早くデビューしたのが研太だった。
シーズン開幕前に平岡監督から1年生の注目選手を聞いた際に名前が上がった研太だった。研太はとにかく「速い」ということを特長に挙げていた。
1年生時は開幕戦からベンチ入りを続けるも終了間際の途中出場が続きリーグ中盤以降は上級生の成長により徐々にベンチから遠ざかり、レギュラーとなったのは2年生になってから。
レギュラーポジションを掴み、研太は試合ごとに成長を重ね、左サイドバックとして信頼を得た存在となる。
絶え間なく上下動を繰り返す無尽蔵のスタミナと秀でたスプリント能力。
3年生になるとそこにキックの精度がゴールに直結する形で花開く。
本人もプレミア開幕前に、今年は得点に結びつくプレーを、と目標を定めて臨んだ今シーズン。
第4節の横浜Fマリノスユース戦では先制点となるミドルシュートでゴールを奪い、クラ選東海大会のJFAアカデミー福島U-18戦ではオーバーラップから抜群のクロスを上げ続けアシストを記録。
浦和戦の聖七へのアシストとなるクロスもパーフェクトだった。
昨年までは攻撃の起点でしかなかったプレーも今年は好調な攻撃陣へゴールへ直結するボールを送り続けている。
一度名古屋で挫折を味わった研太だが、寮でもピッチでもその明るいキャラクターでチームのムードメーカーとしての振る舞い、サッカー選手としての振る舞いとこの3年間での成長は見違えるほど成長を遂げた。
U-18日本代表にも選出され、貴重な左サイドバックの人材として清水のサイド攻撃を将来担う素材として非常に期待している選手、伊藤研太。
平墳迅。
岐阜VAMOSからエスパルスユースに加入した迅だが、多くの期待を寄せられて清水の地を踏んだ選手では当初なかった。
ここ数年昇格していったCFの選手としてのJY時代の実績は加賀美翔や北川航也らと比較すると圧倒的に劣る。エスパルスユースに加入した経緯としても各クラブのセレクションで目に留まらず、エスパルスのセレクションでやっと掴んだチャンスだった。
1年生時にはAチームのベンチ入りすらチャンスを得ることできず、とにかく地道にトレーニングを重ねる不遇の日々。
2年生になり、プレミア開幕とともにスタメンを奪い、俊足の中野優太とコンビを組み、強靭なフィジカルで前線でのキープ、強烈な左足でのシュートと、徐々に頭角を現し始める。
しかし当時の迅はまだ粗削りな部分が目立ち、試合中のプレー精度のムラやメンタル面の不安定さと悪い面ばかりが目につき、平岡監督から試合中に「迅!!!」と叱咤される場面が非常に多い選手であった。
しかし、そんな状況でも平岡監督は迅を使い続けた。
シーズンを過ごす中で迅の成長はゆっくりだが、だが確実に伸びているものを感じた。
転機が訪れたのは今年になりやってきた迅にとって初めての、非常に大きな「経験」。
初めてのトップチームキャンプへの参加。ネクストジェネレーションマッチでの初めてのJリーグ選抜。サテライトリーグの初出場。ルヴァンカップでの初出場、ベンチ入り。
年始のジャパンユースプーマスーパーリーグから昨年とは違う何かを感じさせ、ゴールを奪い続け、より高いレベルでのプレーを経験し、自らに確実にフィードバックしさらなる成長へ繋げる日々。ついにU-18日本代表へと登り詰めた。
迅が事あるごとに言ってくれる「エスパルスに来て本当に良かった」という言葉。
期待を寄せて使い続けてくれた監督コーチ陣。時間がかかったがしっかりと自分のものにしてクラブへ、チームへ成長という形で応えてきた。
サッカーライターの川端氏からは、その伸び代は北川航也以上言わしめる素材。
現時点で俺たち育成年代を見ているサポーターからは「エスパルスに来てくれてありがとう」と伝えたいが、これからはより多くのエスパルスサポーターから「エスパルスに来てくれてありがとう」と言われる選手になってもらいたい。
まだまだ未完の大器、平墳迅。
滝裕太。
天才滝裕太。俺個人的には滝に対してはずっとこの印象。
初めてその衝撃を味わったのは滝が中学1年生時のU-13リーグボルケーノでのジュビロ磐田戦。激しい雨が降る鈴与育成グラウンドでの一戦は滝と吉田峻、そして今年桜が丘高校の主将にしてエースの白井海斗によるトライアングルで磐田が手も足もでない完璧な、ザ・パーフェクトゲームをやってのける。この試合で魅せた滝のプレーに心奪われ、以来滝のことを個人的には天才と評してきた。
中学3年生時のクラ選静岡県大会。まさかのトーナメント初戦敗退から敗者復活トーナメントに駒を進めたエスパルスJY。敗者復活トーナメントの初戦でもHondaFCに苦戦し、1-1でPK戦濃厚という終盤に40m超ロングシュートを決めて勝利へ導いた。
ユースに昇格後、初めて出場のチャンス。交代の手続きを経て交代を待つものの、そのまま試合終了笛が鳴り出場できずという悔しさを味わうなど、1年生時はチャンス掴みきれず。
2年生になると出世番号23番を背負い、左サイドハーフのポジションを掴み、日本クラブユース選手権では久保と共に得点王となる。
そして迎えた今年。ユースのキャプテンとしてチームを牽引。
トップチームでのデビューを果たし、久しぶりに代表にも招集された。
小柄ながらも抜群のテクニックと、センスに溢れ、ドリブルも相手をキレで交わしていくタイプ。
清水の育成の塊のような選手と個人的には感じている。
フィジカル的にプロでどこまでできるのか、不安の部分がある一方、彼のプレーに魅了された者は、彼の活躍夢見てならない。そんなドキドキさせてくれる選手、滝裕太。
平成の三羽烏騒がれた北川航也、宮本航汰、水谷拓磨以来の3人昇格。
研太や迅は県外から清水に来て大きく成長遂げた期待戦士。
滝は清水エスパルスのDNAが深く刻まれたオレンジ戦士。
それぞれキャラクターやタイプが全く異なる3選手だが、彼らが日本平のピッチに揃った時エスパルス育成改革が結果として花開いた時となるこの時を今から夢見て楽しみにしている。
おめでとう!研太、迅、滝!
頑張れ!研太、迅、滝!!