ねむれない・・・
私にしてはめずらしいことですが、なんだか眠りたくないときがありました。
仕方がないので宿題をしました。

考古学の授業の、
拓本をとる宿題です。
土器などの模様を魚拓みたいに浮き彫りにさせるのです。

ぱかっとな。わー。真っ黒のインク。

こういうてるてるぼうずを作って、インクを浸して、拓本を採りたいものに紙をあててぽんぽんします。
さあ、
時刻は深夜2時。
なんの拓本をとりましょうか。
宿題では『
大きいものの拓本をとる。例:マンホール』とのこと。マンホールはひざを突いてやらなきゃいけないからいやでした。数日前から目をつけていたのは、マンションの入り口の看板。道路に面しているけど、大きいし、車に気をつければ大丈夫!
ぽんぽんぽん
ぽんぽんぽんぽんぽんぽん
ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ…
ぽんぽんぽん
ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ…
ひー、明らかに速度を落としたバイクの音がします。こわい、夜中だからほんとにこわい。さっき草むらから声がした気もする。へんなおじさんかしら。こういうときは、一心不乱に作業して、通り過ぎるのを待つんだ。
待つんだ!
まつんだ!
………
あ!つい顔上げちゃった。
うわ、おまわりさん!
あえなく『…何してるんですか』
これはいわゆる職務質問なのでしょうか。
もう、もう必死の弁解。
『だだだ大学の授業で、考古学の授業で、拓本といって、たくほん…』
後になってお腹が減るくらい弁解しました。
『ほー。そうやってぽんぽんやると浮き出るんですねえ。まあ、暗いから、へんなひとも多いから、気をつけてくださいね』
ぼぼぼぼぼぼぼぼぼ、去っていく原付とおまわりさん。
よく考えたら、あのとき私以上のへんなひとはいなかったんじゃないかな。
ドットがめずらしくねむれないよるに、ついに職務質問にあったというお話でした。

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