近所のバス通りを歩いていたら建替え・新築のお知らせ看板がでているお茶屋さんに出くわしました。結構大きいお茶屋さんだったよなと思いつつ通り過ぎようとしたとき、作業場軒先に積まれたお茶箱と「差し上げます」の張り紙が目に留まりました。
かつて何かの本で、この「お茶屋さんのお茶箱」の話を読んだのを思い出しました。桐の箱で、内側はトタン張りの湿気に強い箱だから、貰ってきては大事なものを入れて重宝した、といったような話だったはず。もう夕方で薄暗くなっている中、開けてみようと蓋に手をかけると確かにキッチリ閉まっており簡単には開きません。そのくせ外見は桐の箱ですから、程よくくたびれて見えます。側面に貼ってあるお茶の銘柄と思しきラベルもべらべらとめくれ放題です。この蓋の閉まり具合・カッチリ感と見た目のガサツさのギャップに惹かれました。さらには湿気て困るセメント・壁材料を入れるのにぴったり。お茶っ葉とはいえ口に入れるものが入っていた箱に、建材を入れることにちょっと違和感がありますが、私のような少しずつしか材料を使わない者にはうってつけの箱ではありませんか。もっと言うと、トタンの気密性・茶葉の取り回しがしやすいツルツルの表面と、桐の断熱性・軽さ柔らかさによる積み置く際の扱いやすさを生かしていて、材料のハイブリッドな使い方の先駆けかも?
夕食後、では戴きに…と、車に乗って戻ってみるとお茶箱がない。それもそのはずお店が閉まれば仕舞うに決まってます、火でもつけられかねません。のんびりしすぎました。その後、平日は仕事があって戴きに行けるはずもなく、続く土日は雨降りやら用事やらにあたってしまい、早やひと月が経ってしまいました。漸く先日行ってみると建物の解体が始まっていて…。縁がなかったかな、ちょっと残念。

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