2001年 韓・日・台共同製作
『春の日は過ぎ行く』
主演 イ・サンウ (ユ・ジテ)
ハン・ウンス (イ・ヨンエ)
サンウは自然の音を収録して歩く、サウンドエンジニアの仕事をしていた。
或る時、彼はラジオ局のプロデューサー兼アナウンサーのウンスと出逢い、仕事で収録旅行を一緒にする事になる。
サンウは、痴呆症に掛かった祖母と、早くに妻を亡くした父と叔母との四人で暮らしていた。
一方ウンスは、一度結婚しながらも離婚したという経験を持っている。
サンウとウンスは収録旅行の間、お互いの境遇を超えて、ひと時の愛情が芽生えることになる。
それ以降、二人の愛は消えるとは思えないぐらいに、続く・・・
しかし、初めての愛に目覚め燃え上がるサンウに比べ、以前離婚歴があるウンスは慎重だった。
ただ単に愛する事と、結婚して終生一緒に暮らすという事とは、別物だとさとす。
サンウは、生活に悲観しサウンドエンジニアの仕事も辞める。
やがて、ウンスは何かにつけプライバシーに侵入する、サンウの行動に引っ掛かるようになっていった。
ウンスは、一ヶ月の別離に耐え切れないサンウに対し、とうとう別れの言葉を・・・
悲しみに沈むサンウの所に、夫に浮気されそれを待ち続ける、痴呆のはずの祖母が近づきそっとささやく・・・
『辛いんだね・・・ 去っていったバスと女は追ってはだめだ!』
まるで、自分の境遇と重なるように・・・
その後、祖母は死に装束を着て家を出ていき、帰らぬ人となった。
再び会ったサンウとウンスだったが
さくら並木で、二人は別れていく・・・
サンウは、家で持ち物を片付けていて、ふと水面の流れを収録したテープの中に、ウンスのかすかな歌声をみつけ、サウンドエンジニアの仕事に戻る。
― 私 見 ―
実は四月の雪の映画を見て、ホ・ジュノ監督の手腕に不満を持っていましたが・・
こういう映画を作られるのか? という感触を持ち、もう一度四月の雪を見直してみなくてはいけないなと思いました。
ただ単に、ハッピーエンドを求めず、表面上に有るものよりその下に隠れているものを、考えさせるという創作なのかという事に気が付きました。
愛情と結婚というものは、ほんとに難しいものですよね。
自分の理念自体が『結婚して一緒に生活していても、家族は他人だ!』
という事を常に頭の中に入れて生活しています。
何十年も違う環境の中で生活してきたものが、いくら好きというだけで“結婚”という儀式に縛られ、プライバシーも何もかもさらけ出して、いつも一緒の行動、一緒の思考をしないといけないか?
いや そうしないといけないと思い込む・・・
そういう、我慢をし続けるといつかは破局が訪れます。
三十年近く違う環境に育ったのであれば、もう三十年・・つまり60歳近く寄り添っていれば、もう相手を気にすることなく終生一緒に暮らせる。
くらいに考えた方が良いでしょう。
この映画も全体的に、その様なゆっくりとした流れで作ってありますが、映画が終わった後のエンディングで流れた曲が、この映画の全てを物語っているような気がしてなりません。
作曲:松任谷由美 作詞:松任谷由美orキム・ユナ(情報が両方有りますので判断できません) 歌 yuna(キム・ユナ)
♪
目を閉じると ふと浮かんでくる
懐かしい日の記憶
今でも胸が しめつけられるのは
人も咲いては 散る花のように
美しくて 悲しいからなのだろう たぶん
春の日はさりげなく 過ぎゆく
花びらは 風に舞い散る
立ち去ってしまった 美しい人たち
そっと目を閉じれば 手が届きそうな
かすかに心が痛む 思い出のようなもの
春は巡り来て 花は咲いては散る
美しくも とても悲しい物語

0