「村の写真集」
監督・脚本:三原光尋 撮影:本田茂 音楽:小椋佳 写真監修:立木義浩 2003年日本 上映時間111分 配給:ワコー カラー ヴィスタサイズ
出演:藤竜也/海東健/宮地真緒/甲本雅裕/ペース・ウー/眞島秀和/桜むつ子/大杉漣/原田知世
採点:★★★★
(上映館:新潟シネウインド)
ダムに沈む徳島の村の風景を、写真館を営んでいる父親が撮る事になり、都会で写真家のアシスタントをしていた息子が助手として呼ばれる。父親は写真館の仕事がないため、林業の現場作業員をしているが、山を降りて久々に写真の仕事に戻る。彼の写真の撮り方は、一軒一軒思い機材を担いで歩いて尋ねるというやりかた。息子はこんな仕事をしたくないのでなげやりな気持ちである。あるとき、村の古老が古くから伝わる民謡を歌って聞かせているときに、息子は携帯電話で友達と話をしてしまう。それを見た父親は激しく息子を殴りつける。
この一件から息子は父親の手伝いを辞めてしまう。ひとりで機材をかついで一軒一軒回る父親。息子はその間、村の子どもの写真を撮ったりするが、とある酒場で村の悪口を言う男になぐりかかってしまう。そう、嫌で嫌でたまらないと思っていた田舎でも、そこに住む人々を悪く言われるのは許せない気持ちがしたのだ。
しかし、父親は実は病にかかっていたことを隠しており、ついに入院してしまう。父親が重病であることを知る息子。写真集はあと1枚だけになっていた。それは父親と共に働いていた林業の現場のひとたちだった。息子は代わりに写真を撮るが、自分が父親のようには取れないことを痛感する。結局息子は父親をかついで山に登り、最後の1枚を撮らせる。
だが、実はもう一枚、取り残した写真があることを息子は知っていた。ある天気の良い日、父親を面倒を見る娘が外に連れ出す。そこへやってきたのは息子と、以前駆け落ちをした長女と孫だった。そう、この一家の写真はまだとっていなかったのだ。
頑固に村の写真にこだわる父親を藤竜也が好演。もうこういう歳になったんですねえと感慨深い。息子の恋人で中国人のモデル、ペース・ウーが非常にいい。この村の良さを気づかせてくれたのも彼女だったのだ。東京で最先端の仕事を目指している彼が、ある意味地方人である中国人を彼女にしているというのは、実は彼自身も心底都会が良いと思っているわけではないというシグナルのようにも思える。
東京と地方を両方知っている自分としては、息子の東京に強く引かれる気持ちはちょっとアナクロニズム的に思える。今の時代は都会と地方の差というのは昔ほど大きくはない。ただ、こういう映画のモチーフがいまだに多く描かれているというのは、東京に住む人は、現実以上に東京と地方の差を過大に考えているのかもしれない。問題は、この映画に描かれているような田舎の光景は、どんどん失われつつあるということにあると思える。

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