「いつか読書する日」
監督・原案:緒方明、原案・原作・脚本:青木研次、撮影:笠松則道、音楽:池辺晋一郎 2004年 上映時間:127分 日本・カラー・ヴィスタサイズ 配給:ローラーナー
出演:田中裕子/岸辺一徳/仁科亜季子/渡辺美佐子/上田耕一/杉本哲太/鈴木砂羽/香川照之/左右田一平/神津はづき/田根楽子/馬渕英里何/山田辰夫/柳ユーレイ/堀部圭亮/江口のりこ/石井洋輔/儀間悠悟/相澤滉希/奥田佳菜子/山口信人/諏訪ひろ代/塚田恵子/田中隆三/藤田傳/諏訪太朗
採点:★★★
(上映館:新潟市民映画館シネ・ウインド)
50歳の男女の純愛物語とあってか、中年のおばさんたちで映画館は満員だった。高校時代つきあっていた二人が、お互いの両親の不倫とその事故死をきっかけに疎遠になり、心はひかれつつも別々の人生を送る。女は独身を貫き、坂の多い町を朝は牛乳配達、昼はスーパーのレジ係をして生活をしている。彼女の楽しみは新聞の新刊書の広告を切り抜いて、いつか読書しようと思うことだけだ。
彼は市役所に勤めながら、重病の妻を看護している。彼は牛乳が嫌いなくせに毎朝牛乳をとっている。毎朝6時5分、性格に配達される牛乳の音があこがれの女性の気配であることに妻も次第に気づき始める。そしてある日、牛乳配達の女性を呼び、自分の死んだ後に夫と一緒になることを願う。しかし、それは彼女にとっては怒りを覚えるような話である。「ずるい」
妻は死に、一人残された夫のもとを彼女は訪ねる。そして彼を一緒に両親の亡くなった事故現場に誘う。お互いの気持ちを30年ぶりに話し、ささいな事からお互いがお互いを避けていたことに気づく。二人は激しく抱き合い、求め合う。
それだけでいいじゃないですか?この映画。なぜ翌朝、彼は溺れかけた少年を救うために自らの命を落とすのですか?せっかくひとつひとつ積み上げた、ディテールの良さを、つまらない結末をつけたことによって台無しにしてしまった。
そのことがとっても残念だった。なんだかせっかくロスタイムに1点取って勝利したと思った瞬間、失点してしまったようだ。(それは昨日のアルビレックス新潟の試合だったが)
映画の終わり方は、絶頂に達して後のことは余韻としてみるものに任せておけばいいのです。つまらない結末で萎えさせないでください。
監督の緒方明といえば、昔々怪作「東京白菜関K者」を撮った人です。うーん、懐かしいなあ。
田中裕子さん、ほんとうに素晴らしい。惚れてます。牛乳かついで長い長い坂を何度も登らされるし、やたらと走らされるし、監督、サドですか?ラストのドアップの絵なんか、女優としてはいちばん撮られたくない絵でしょうけど、そういう姿も素敵です。
渡辺美佐子さん、いったいいくつなんでしょうか。最高の悪女を演じた「東京流れ者」以来、ちっとも変わっていないです。すごいです。また物忘れのひどくなったおじさん役の上田耕一、いい味出してます。スーパーの店長香川照之、スーパーの同僚田根楽子など、周りもいい役者さんそろえてます。
返す返すも残念!のひとことにつきる映画でした。

0