「空中庭園」
監督・脚本:豊田利章 原作:角田光代 撮影:藤澤順一 音楽監督:ZAK 楽曲:ヤマジカズヒデ 主題歌:UA 2005年 日本 114分 カラー・ヴィスタサイズ 配給:リトルモア
出演:小泉今日子/板尾創路/鈴木杏/広田雅裕/國村隼/大楠道代/ソニン/今宿麻美/瑛太/勝地涼/鈴木卓爾/永作博美(特別出演)
上映館:新潟シネ・ウインド
採点:★★★★
郊外の団地に住む4人家族。何事も隠さず話すというルールからいきなり娘が自分の「出来た」場所を尋ね、母親が「ホテル野猿(のざる)」と答えるところから始まる。そういうありえない家庭を描きつつ裏では浮気をしまくっている夫(板尾)、不登校の娘(杏)、自閉症気味の息子(広田)、そして自分を押し隠すことによって家族を守ろうとしている妻(小泉)と、仮面の家族ぶりは日本映画の典型的なストーリー展開。
こういう家庭崩壊劇は正直見ているのも気がめいるのだけれども、夫の浮気相手の(ソニン)が息子の家庭教師として家にやってくるあたりから徐々に映画にひきつけられてくる。次第に妻が自分の、母親に「産まなければ良かった」と言われたことの回想や高校時代のいじめ、嫌いだった家を出るために狙いをつけて妊娠したことなどが明らかになっていく。
しかし、実は「思い込みから見えなくなっていることもある」との息子の指摘がだんだんに姿を現していく。母親(大楠道代)が語る過去と自分の記憶との相違、兄からあれほど憎んでいる母との関係を「仲が良すぎる」と指摘されることなどから改めて自分を見直すクライマックスのシーンは印象的である。
ひとりひとりの登場人物の描き方は非常に類型的でありながら、それぞれの人物の視線から描いているのでとても暖かさを感じてくる。小泉の母役の大楠道代がいい。相変わらずチャーミングな女性である。夫の浮気相手のアブナイ女性に永作博美が特別出演。

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