明日の記憶
監督:堤幸彦 製作:坂上順/川村龍夫 エクゼクティヴプロデューサー/渡辺謙 原作:萩原浩 脚本:砂本量/三浦有為子 撮影:唐沢悟 美術:及川一 音楽:大島ミチル 2005年日本 配給:東映 カラー・ヴィスタサイズ 上映時間:122分
出演:渡辺謙/樋口可南子/坂口憲二/吹石一恵/水川あさみ/袴田吉彦/市川勇/松村邦洋/MCU/遠藤憲一/木野花/木梨憲武/及川光博/渡辺えり子/香川照之/大滝秀治/田辺誠一
上映館:ワーナー・マイカル・シネマズ新潟(スクリーン4)
採点:★★★★★
原作を読んだ渡辺謙がぜひ映画化したいと念願して製作された作品。難しいテーマの作品で、どのような撮り方もできるところだと思うが、しっとりと落ち着いたトーンで素晴らしい作品となった。素晴らしいのは特に渡辺謙と樋口可南子の演技。ともに新潟県出身なのだけれども、大げさなことを嫌い、地道な努力をよしとする県民性が、どこかこの映画のもつ、抑制された雰囲気とも相通ずるようにも感じる。
映画では、アルツハイマーを発病して時折失態を演ずるようになる渡辺に対する周囲の反応はほとんど描かれない。映画の殆どは夫婦ふたりの内面を表すだけにとどまる。そのことは過剰な説明を排し、見る側に委ねられている。渡辺の病状が進み、過去との時間軸も不明瞭になり、身近な人も見分けられなくなって来る。その夫を支えつつ、生活のために働き出した妻がだんだん仕事に対する責任が増し、生きがいになってきたときに、どうすればいいのだろうか。そういったいろいろな葛藤を抱えている。それに対する結論とは何か。
観ている間、何度も涙があふれてくる、(僕の)本年のベスト1となりそうな作品であった。

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