「太陽」SOLNTSE (THE SUN)
監督:アレクサンドル・ソクーロフ 製作:イゴール・カレノフ/アンドレイ・シグレ/マルコ・ミュレール 脚本:ユーリー・アラボフ プロダクションデザイン:エレナ・ズーコワ 衣装デザイン:リディア・クルコワ 編集:セルゲイ・イワノフ 音楽:アンドレイ・シグレ
2005年ロシア/イタリア/フランス/スイス 115分 カラー・ヴィスタサイズ
出演:イッセー尾形/ロバート・ドーソン/佐野史郎/桃井かおり/つじしんめい/田村泰二郎/ゲオルギイ・ピツケラウリ/守田比呂也/西沢利明/六平直政/戸沢佑介/草薙幸二郎/津野哲郎/阿部六郎/灰地順/伊藤幸純/品川徹
上映館:銀座シネパトス2(東京都)
採点:★★★★
もっとも気になったのは、監督が外国語で演じられる演技に対して十分に演出できているのか、という点だ。セリフ回しというのは映画の最も重要な要素であり、その部分はいったい誰が監督したのだろうか。
昭和天皇を主人公にした映画というのは、没後18年を経過した今となってもなかなか日本人には撮り難い題材であると言える。外国人であるからこそ、こうした映画が作られうると思うが表面的なそっくりショーでもなく、ドキュメンタリーでもなく、人間と神の狭間で揺れ動く一個の個人としての天皇を描いたという点で普遍性を持つ映画となった。だから、似ているとか似ていないとか、史実に対してどうとかいう批判は当らない。戦争の前線から最も遠い王宮のシェルターに隔絶されつつ、神という檻にとじこめられている天皇の孤独を見事に描いたと言えるだろう。
特に前半の描写はあまりにも淡々としており、眠気を催す部分も多い。しかしそれとても、この作品の独特のリズムになっていて、それはある意味、天皇の生活の退屈さを表しているとも見える。この作品が日本では公開不可能と言われたのは、もちろん政治的な意味もあるだろうが、それよりもこうした淡々とした描写の映画が商業的に引き合わないと考えられたのだろう。だが、小さな映画館での単館で始まった公開は徐々に広がりを見せ、全国的な公開が予定されている。それはシネコンの普及によって日本の映画上映形態がこうした映画の公開を可能にしているということもあり、観客にとっては慶ばしいことである。

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