「白痴」
監督・脚本:手塚眞 製作:松谷孝征 プロデューサー:古澤敏文 企画:松谷孝征 原作:坂口安吾 撮影:藤沢順一 美術:磯見俊裕 衣装デザイン:伊藤佐智子 音楽:橋本一子 セットデザイナー:花谷秀文 絵画:恒松正敏
1999年 日本 146分 製作所:手塚プロダクション 配給:松竹 カラー・ヴィスタサイズ
出演:浅野忠信/甲田益也子/草刈正雄/橋本麗香/藤村俊二/江波杏子/あんじ/松岡俊介/岡田眞澄/原田芳雄/泉谷しげる/小野みゆき/筒井康隆
上映館:新潟シネウインド
採点:★★★★
手塚眞監督のトークがあるというので、「ゆれる」に引き続き見る。(ここ、シネウインドは椅子が簡単なものなので2本見るのはつらいのだけれども)まず、主演の浅野忠信への監督自らのインタビュービデオが流され、撮影地新潟の想い出などが語られた。撮影の合間には新潟の商店街でギターを片手に路上ライブをしていたという秘話も語られた。
ところで、映画は、手塚眞らしい、驚くべきヴィジュアルにあふれた描写が特長。廃墟と化している町並みと超未来的なTV局との対比が凄い。ただ、表面的なヴィジュアルに関わらず、テーマ自体は非常に単純明快。一人の生きる目的さえ失った男が、一人の「白痴」の女性に出会うことによって生きる意味を見出す、ということ。ラストの噴火口のシーンは救世観音の出現であり、映画的にはカットしたほうが座りがいいと監督自身も認めているが、絶対に撮らなければいけなかったシーンという。そう、あれこそ監督が取りたかったシーンなのだ。
アフタートークではこの映画が「カタルシス」を描いたものであると語られた。そのためにある意味過剰とも言える空襲の描写や悲惨な焼け跡の描写も必要だった。この映画は原作を読んだときに頭の中でどんどん映像が膨らみ、読み終わった時にはすでに一本の映画として完成していたという。それを映画として実現するために10年の月日が経過しており、練り上げていく過程で変化したところもあるけれども基本的なものは変わっていない。映画というのはある意味タイムマシンのようなところがあり、今の自分がこの映画を撮ったら全く別の作品になるだろう。ただ、今見直してみて、映画のつくりとしてはオーソドックスな映画の文法に忠実でちょっとほっとした、ということも言っていた。監督から直接映画について聞くというのは、なかなかない体験ではあるが、監督の考えだけが正しいというわけではなく、映画を観る人それぞれがその人なりの映画の解釈があっていい、ということも言っていたので自分も自分なりの解釈を楽しみたいと思う。

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