「愛の流刑地」
監督・脚本:鶴橋康夫 製作:富山省吾 プロデューサー:市川南/大浦俊将/秦祐子 協力プロデューサー:倉田貴也 原作:渡辺淳一 撮影:村瀬清/鈴木富夫 美術:部谷京子 編集: 山田宏司 音楽:仲西匡/長谷部徹/福島祐子 主題歌:平井堅「哀歌(エレジー)」
2006年日本 配給:東宝 上映時間125分 カラー・ヴィスタサイズ R-15
出演:豊川悦司/寺島しのぶ/長谷川京子/仲村トオル/佐藤浩市/陣内孝則/浅田美代子/佐々木蔵之介/貫地谷しほり/松重豊/本田博太郎/余貴美子/富司純子/津川雅彦
上映館:長岡シネマチャオ
採点:★★★
日経新聞に連載された渡辺淳一の小説の映画化。原作は日経唯一のお色気面とあって話題を呼んだ、というか「笑い」を呼んでいたのだが単行本もベストセラーになり、晴れて映画にもなった。映画は「全編の50%に及ぶ愛欲シーン」などと宣伝してもっぱらエロ映画のノリだけれども、実は原作のテーマをきっちりと浮かび上がらせた秀作だった。
原作は中年男の身勝手な不倫の果てに愛人を殺したというだけの印象が強い。不倫をしようというのに避妊もせず、女まかせ。セックスの様子をひそかに録音して後で聞きながらマスターベーションをするというあきれた作品であった。
鶴橋監督はそんな原作から子ども3人を残して愛人の元へとも走れず、苦悩する女という視点からとらえる。原作ではあいまいだったテーマが映画を通じてはっきりと描かれている。原作ではせっかく女性検事を登場させながらしりつぼみだったところを、女性検事も不倫関係にある設定にし、中心人物としている。(この女検事がちょっとエッチすぎるのはサービス過剰だけれども)
そしてやはり寺島しのぶという女優を主役に選んだことが大きい。この人、ちょっと骨格ががっちりしている感じで美人ではないし、原作の冬香のイメージにはそぐわないけれども、逢瀬を重ねるごとに愛欲におぼれてゆく女性を好演している。豊悦の方は、まあこんなもんでしょ。
ただ、最終弁論で豊悦がこの作品のテーマを声高に論じるところはちょっとまずい。TV的にはこうなんだろうけれども、せっかくその後に冬香の遺稿が出てきてテーマが語られるというのに、その前にネタ晴らししては興ざめ。映画って他の出演者が知らなくても観客だけが知っていればいいんだよ。って思うのだ。それで★1つ減点です。
PS.本田博太郎が裁判官なのにびっくり。このひと本当にいろんなところに出てきますねえ。
寺島しのぶの母役に富士純子ってもうやめようよ。

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