「バベル」BABEL
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 製作:スティーヴ・ゴリン
ジョン・キリク/アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 脚本:ギジェルモ・アリアガ 撮影:ロドリゴ・プリエト 音楽:グスターボ・サンタオラヤ
配給:ギャガ・コミュニケーションズ 2006年アメリカ 143分
出演:ブラッド・ピット/ケイト・ブランシェット/ガエル・ガルシア・ベルナル/役所広司/菊地凛子/二階堂智/アドリアナ・バラーザ/エル・ファニング/ネイサン・ギャンブル/ブブケ・アイト・エル・カイド/サイード・タルカーニ/ムスタファ・ラシディ/アブデルカデール・バラ/小木茂光/マイケル・ペーニャ/クリフトン・コリンズ・Jr/村田裕子/末松暢茂
上映館:ユナイテッド・シネマ新潟(スクリーン4)
採点:★★★
モロッコの山中で少年が銃の試し撃ちをした。その弾に当たって大怪我を負ったアメリカ人女性。その女性の家でメイドをしているメキシコ人女性。少年の撃った銃の元の持ち主である日本人の、聾唖者である娘。ひとつの事件から導き出される様々な出来事を時間軸を前後させながら描いていく。
負傷したアメリカ人夫妻が主人公というわけでもなく、それぞれの場所でそれぞれの悲劇が起こっているということを群像的に描いているが、この映画のテーマは「もどかしさ」にこそある。瀕死の重傷を負った妻を助けるために何もできない男のもどかしさ、息子の結婚式のためにメキシコに里帰りしたメイドがアメリカに戻れなくなり、国境を突破したあげく砂漠に放り出され、ようやく救出されるが違法滞在として自分の誠意が伝えられないもどかしさ、そして究極は言葉を話せない日本人の聾唖少女のやるせない青春。それぞれのもどかしさの中で、最後、日本人の親子はようやくお互いの気持ちを通じさせて映画は終わる。
もどかしさを伝える、それだけのためにこの壮大な映画はあるのだろう。

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