「転校生 さよなら あなた」
監督:大林宣彦 製作:黒井和男 プロデューサー:鍋島壽夫/大林恭子 原作:山中恒 脚本:剣持亘/内藤忠司/石森史郎/南柱根/大林宣彦 撮影監督:加藤雄大 音楽:山下康介/學草太郎 主題歌:「さよならの歌」寺尾紗穂 製作:角川映画/日本映画ファンド/NTTDoCoMo
2007年日本 上映時間120分 カラー・ヴィスタサイズ
出演:蓮佛美沙子/森田直幸/清水美砂/厚木拓郎/寺島咲/石田ひかり/川口トモロヲ/斉藤健一/窪塚俊介/根岸季衣/宍戸錠/山田辰夫/入江若葉/小林桂樹(写真)/犬塚弘/古手川祐子/長門裕之
上映館:新潟シネウインド
採点:★★★★★
名作「転校生」から25年を経て、再び大林監督が自作をリメイクした。舞台は尾道から信州長野へ移る。主人公一夫少年は尾道から離婚した母とともに転校してくるが、そのクラスには子どものころ同級生だった一美がいた。
途中までは、細かい設定の差こそあれ、前作をなぞる形でドラマは進行する。一美の蓮佛美沙子は前作小林聡美より確実に大林監督好みの美少女である点が違うくらいだ。そのことは、前作に比べて少女の色香を前面に押し出したとも見える。前作はあえてそうした部分を薄めてあるのだと思う。それは思春期の男女が入れ替わるという、かなり性的な側面を持つきわどいテーマを処理するテクニックでもあろう。
リメイクである本作では、その部分はもうすこし強調されることになる。入れ替わったことに気づいた一夫(体は一美)が下着にオーバーオールという格好で自転車で疾走するシーンなどはかなりどきっとさせられる。
しかし、そういう部分があるにせよ、基本的には前作をなぞった形で進むストーリーは一美の体の不調というところから一気に変化を来たす。一美は不治の病に冒されていた。このことは前作を見た観客にとっても大きな衝撃である。いったい二人は元の体に戻れるのか。戻ったとしても、死ぬのはどちらになるのか。
死というものをドラマの主題に据えるのは、しばしば安易な選択肢として使われ、ドラマを盛り上げる。この映画でも見方によっては、ドラマを盛り上げるための手段と思えなくもない。しかしこのストーリー変更によって、男、女、という垣根を越えて生というものに思いを至らせる作品となっている。
しかし、大林監督はそのことを大上段に振りかざしたりはしない。あくまでも作品を楽しんでもらうということを忘れていないのはさすが。見終わってすがすがしい余韻の残る映画であった。

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