「マルタのやさしい刺繍」DIE HERBSTZEITLOSEN(LATE BLOOMERS)
スイス(ドイツ語) アルシネレラン 上映時間 89分
監督・原案:ベティナ・オベルリ 脚本:ザビーヌ・ポッホハンマー 撮影:ステファン・クティ 美術:モニカ・ロットマイヤー 衣装:グレタ・ロデラー 音楽:リュク・ツィマーマン
出演:シュテファニー・グラーザー/ハイジ・マリア・グレスナー/アンネマリー・デューリンガー/モニカ・グブザー/ハンスペーター・ミュラー=ドロサート
上映館:新潟シネウインド
採点:★★★★★
スイスの片田舎の村、夫に先立たれた80歳のマルタは生きる希望をなくしていた。しかし、ネズミに食いちぎられた合唱団の旗の修理を頼まれたことがきっかけで、50年前に夢だったランジェリーショップを開く決意をする。しかしそれを知った保守的な村人たちはなんと恥知らずな、と非難される。息子の牧師にまで教会のミサで公然と批判されてしまう。しかしそんな村人の目を気にすることなく自分の思うとおりに生きようとするマルタ。
内容からして観客は中高年の方が多かった。普段は映画館に足を運びそうにないこういう人たちをシネウインドではよく見かける。そして自らの道を生き始めるマルタに大いに勇気付けられているのだ。この映画の見所はマルタが旗の修理の生地を買うためにベルンの町に出かけ、ふとランジェリーショップに立ち寄るシーン。そのショップの商品を見て、仕上がりの悪さに彼女は一瞬にしてプロの目になり、ひとつひとつの商品の悪いところを指摘する。彼女がランジェリーショップを開こうと決意するきっかけは、粗悪な商品に我慢できないプロ意識とでも言うものだったのだということがわかるシーンである。だからその後の下着というだけで破廉恥なものという村人たちの考え方に我慢できなかったのだ。
地方の高齢化というのは世界共通の問題なのだなあ、と思いつつ、信ずる道を進むマルタに拍手喝采の映画なのだ。

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