「アクト・オブ・キリング」THE ACT OF KILLING
2012年 デンマーク/インドネシア/ノルウェー/イギリス 配給:トランスフォーマー 121分
監督:ジョシュア・オッペンハイマー 共同監督:クリスティーヌ・シン 製作:シーネ・ビュレ・ソーレンセン 製作総指揮:エロール・モリス/ヴェルナー・ヘルツォーク/アンドレ・シンガー
(ドキュメンタリー)
上映館:新潟市民映画館シネウインド
採点:★★★★☆
「一人殺せば殺人者だが、百万人殺せば英雄だ」というのはチャップリンの「殺人狂時代」で主人公がラストに吐くセリフで、ベイルビー・ポーティーズというひとの言葉だそうです。本作は1960年代にインドネシアで100万人規模の大量虐殺を行った英雄たちが自らの行為を映画として再現するというドキュメンタリーです。
1965年9月30日、反米的な態度をとっていたスカルノ大統領に対して、共産主義者がクーデターを起こし、6人の将軍を殺害、これに対抗して7番目の将軍スハルトが反クーデターで政権を掌握、徹底的な共産主義者の掃討を行った。実際に共産主義者の掃討を行ったのは、プレマン(フリーマン)と呼ばれるヤクザで、新聞社と結託して華僑や自分たちの意に染まない者を次々と連行し、虐殺していきました。
プレマンの実行部隊となったのはパンチャシラ青年団という民兵組織で、300万人以上の組織で、副大統領はじめ閣僚も彼らの一員というか頂点に位置している。つまり、この物語は現在進行形であるというのが怖いところ。
プレマンの英雄、アンワル・コンゴが過去の虐殺行為を再現するというのがこの映画のストーリー。彼は国営テレビにも出演し、にこやかに笑うレポーターに虐殺の模様を語ります。なんだか近未来SFの一シーンのようにも錯覚させられそうですが、これは現実なのです。まあ、湾岸戦争の英雄がテレビショーに出演しているような感じではあります。
この作品で気を付けなければいけないのは、あくまでも虐殺を主導した現政権トップの意向に従って作られた作品であるということです。自らの義父が共産党員として連行された経験を語る華僑の息子は、それを笑いながら話し、「決してこの映画を批判しているわけじゃないんです」と何度も繰り返す。
映画の最後でアンワル・コンゴは過去の自分の行為に対して、「俺は罪を犯したのか?」と悔悟の様子を見せますが、これもあくまで彼がこの作品が公開された後のことを意識した行動という見方もできます。ハリウッド映画を沢山観ており、虐殺のシーンも映画を参考にした、という彼が、この映画のエンディングをある種の印象を与えるものにするような演出を要求していることは十分にあり得ます。
そういうエクスキューズの部分も含めて、この映画はとても興味深いものとなっています。この映画の公開に際して行われたデヴィ・スカルノ夫人のインタビューとか、当時のインドネシアをめぐる国際情勢とか、いろいろなことをあらかじめ知ることによって、この映画の今日性というか、凄みが実感されるのです。
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