[舞妓はレディ」
2014年 東宝 135分
監督:周防正行 製作:石原隆/市川南/宮前周次/石川豊/柴田嘉章/細井俊介/小形雄二 エグゼクティブプロデューサー:桝井省志 プロデューサー:土屋健/土本貴生/堀川慎太郎 脚本:周防正行 撮影:寺田緑郎 美術:磯田典宏 編集:菊池純一 振付:パパイヤ鈴木 音楽:周防義和 音楽プロデューサー:和田亨 照明:長田達也
出演:上白石萌音/長谷川博己/富司純子/田畑智子/草刈民代/渡辺えり/竹中直人/高嶋政宏/濱田岳/小日向文世/岸部一徳/中村久美/岩本多代/高橋長英/草村礼子/妻夫木聡/松井珠理奈/武藤十夢・大原櫻子/徳井優/田口浩正/彦摩呂/津川雅彦/青木珠菜/パンツェッタ・ジローラモ/畠山明子/藤本静/勇家寛子/宮坂ひろし/生津徹/宝井誠明/柳川純子/芦屋小雁/六平直政/渡辺大/瀬戸朝香/加瀬亮
上映館:ユナイテッドシネマ新潟SC5
採点:★★★★☆
周防正行監督の新作は、京都の舞妓さんを巡る物語。タイトルは「マイ・フェア・レディ」のもじりで、田舎から出てきた娘が音声学の大学教授の指導により京都弁を話し、舞妓デビューするというものです。
出演者が突然歌うということでは、ミュージカル仕立てにはなっているのですが、これはミュージカル映画か、と言えば、ちょっと違う気もします。ミュージカルなら映画の冒頭からミュージカルであることをきちんと観客に示しておかなければならないと思うからです。冒頭にお渡辺えりが男装しているのが変だな、という感じなのですが、それはまあ、お茶屋遊びのシーンなので観客としては白ける感じです。こんなことしてなにが面白いの?ってところですね。
主人公の春子が登場して舞妓になりたい、というあたりも人間関係や状況の説明に終始して、あまり乗れない感じです。だから春子がいきなり歌い始めるのは、なにこれ感が強い。ようやく観客は、この映画がミュージカル仕立てなのね、って初めて気づくので、TVだとチャンネル変えられちゃいかねないです。ただ、映画館なので気を確かに持って様子を眺める、という感じですね。
こういう危険な状況を通過すると、だんだん映画の中身に引き込まれていきます。歌い、踊るシーンも違和感なく受け入れられる状態になります。結果的に見終わった時には感動すら感じることが出来てめでたしめでたし、という映画でした。
さて、この映画のツボはなんでしょう。基本的にはひとりの少女の成長物語です。田舎から出てきた少女が試練を乗り越えて舞妓として社会に出ていく姿は感動的です。最後に「客は舞妓に何を見るのか、それは若さである。若い女性が一所懸命に芸事に取り組んでいくという姿勢を観るのだ」という常連客岸部一徳のセリフが象徴しています。
それを描くためには、役者は京ことばに熟練し、踊りや歌に習熟し、長年培ったものであるように演じなければなりません。この映画では若い上白石萌音の演技もさることながら、お母さんの富司純子、先輩芸妓の草刈民代、田畑智子等々が、キチンと芸ができなければなりません。その上にミュージカルの歌も歌わなければならない。とっても大変な仕事だと思います。
映画の中でのリアリティというのは、現実のリアリティとは別の所にあるわけですが、さりとて、踊りの師匠役の人は踊りのプロ、三味線の師匠、端唄の師匠、それぞれがプロでなければならないわけで、チョイ役で出ている徳井優、田口浩正、彦摩呂、といった人たちもそれなりに大変なんじゃないかなあ、などと思うわけです。
ともすればゲイシャという差別的な表現をされてしまう花街の姿を、周防監督はきちんと描きたかったのでしょう。国際的にも評価の高い周防監督の映画なので、海外でこの映画が上映されることになれば監督の思いも少しは伝わることになるかもしれません。
http://www.maiko-lady.jp/

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