「海街diary」(2015年、東宝=ギャガ)127分
監督・脚本・編集:是枝裕和 製作:石原隆/都築伸一郎/市川南/依田巽 プロデューサー:松崎薫/田口聖 アソシエイトプロデューサー:西原恵 ラインプロデューサー:熊谷喜一 原作:吉田秋生 撮影:瀧本幹也 美術:三ツ松けいこ 衣裳デザイン:伊藤佐智子
出演:綾瀬はるか(香田幸)/長澤まさみ(香田佳乃)/夏帆(香田千佳)/広瀬すず(浅野すず)/加瀬亮(坂下美海)/鈴木亮平(井上泰之)/池田貴史(浜田三蔵)/坂口健太郎(藤井朋章)/前田旺志郎(尾崎風太)/キムラ緑子(高野日出子)/樹木希林(菊池史代)/リリー・フランキー(福田仙一)/風吹ジュン(二ノ宮さち子)/堤真一(椎名和也)/大竹しのぶ(佐々木都)
上映館:イオンシネマ新潟西SC2
採点:★★★★★
鎌倉を舞台にした是枝監督によるホームドラマは、松竹大船調の懐かしい雰囲気の映画です。3人の姉妹が、自分たちを捨てて山形の温泉町で亡くなり、異母妹を引き取るという、題材としてはどろどろになりそうなテーマですが、是枝監督はさらりとした映画に仕上げます。この辺は、一見小津安二郎の映画に似ているようにも思いますが、小津の映画は、一見なんともないホームドラマに見えて実は冷徹でシニカルなものであったのとは対照的だと思います。小津の映画ではカメラはどんと低い位置に構えて冷徹な眼差しで人物を見つめますが、是枝は静かに視線はゆれており、手持ち風のカメラワークが人物の微妙な心の動きに合わせて動くのです。
小津安二郎の時代と異なり、現代では数多くのテレビドラマが作られ、その中では人の心をえぐる言葉の暴力がどんどんエスカレートしています。是枝監督はそうした作品と一線を画すため、わざと決定的な破たんを引き起こす言葉をあえて用いないのだと思います。
一方でこの映画は、父親の死に始まり、親しいひとの死で終わる、死をテーマとした映画です。死んでしまった親しいひとと、新たに残された若い少女との対比こそがこの映画の主題でしょう。このため、この映画は、若くて将来の希望にあふれたひとと、年代を重ねたひととでは見終わった後の感想は大きく異なるのではないでしょうか。原作マンガのファンにとっては残念な映画なのではないかな、と思いますが、若いころの風吹ジュンや大竹しのぶを知っている世代にとってもかなりショックな部分があります。そういう意味では、綾瀬はるかのトウの立った感じや長澤まさみのダメ女っぷりもかなり来ている感があります。みずみずしい魅力に溢れた広瀬すずにしても、いつかは年を取っていくのだ、という諦念のようなものも、感じられる映画ではありました。
そうしたことも含めて、ある意味何も起こらない映画ですが、時の流れそのものを描いた映画と見れば、実はかなりシニカルな映画なのかもしれません。
http://umimachi.gaga.ne.jp/

0