「万引き家族」(SHOPLIFTERS)
2018年 120分(ギャガ)映倫 PG12
監督:是枝裕和 製作:石原隆/ 依田巽/中江康人 プロデューサー:松崎薫/代情明彦/田口聖 アソシエイトプロデューサー:大澤恵/小竹里美 脚本:是枝裕和 撮影:近藤龍人 美術:三ツ松けいこ 衣裳:黒澤和子 編集:是枝裕和 音楽:細野晴臣
出演:
リリー・フランキー(治)/安藤サクラ(信代)/松岡茉優(亜紀)/池松壮亮/城桧吏(祥太)/佐々木みゆ/緒形直人/森口瑤子/山田裕貴/片山萌美/柄本明/高良健吾/池脇千鶴/樹木希林(初枝)
上映館:ユナイテッドシネマ新潟SC1
採点:★★★★★
カンヌで最高賞を獲得した作品ですが、カンヌは泥臭く個性的な作品が受賞する事が多いので万人にオススメの作品と言う訳でもありません。この作品も是枝裕和監督らしい生々しくて猥雑な香りのする映画です。
是枝作品で万人受けしそうなのは「海街diary」「そして父になる」辺りですかね。一方「誰も知らない」とか「空気人形」等はかなり観る人を選ぶ作品だと思います。「海よりもまだ深く」は失敗作だと思うし、「三度目の殺人」は意欲作だけど必ずしも評価は高くありませんでした。そして「万引き家族」。
カンヌの審査員長のケイト・ブランシェットが絶賛した映画ですが、言ってみれば駄目な日本人を描いているので、国辱発言がネットでは飛び交っていたりするわけですが、ほんとうに冒頭から駄目人間ばっかり出てくるので嫌になるくらいです。
しかも駄目人間をやらせたら並ぶ者はないリリー・フランキーです。ばあちゃんの樹木希林は温厚なばあちゃんかと思えば、結構一癖も、二癖もある怪しいばあちゃんです。リリー・フランキーの妻安藤サクラは平凡なオバチャンかと思えばだんだん色っぽくなってきます。旦那と二人で素麺をすするシーンの下着姿の仇っぽいこと!また、安藤サクラの娘にしては年齢の高い松岡茉優の可愛さもたまりません。なんと風俗店で働いているのです。
そして是枝作品では重要な子役の二人。最初女の子かと思ったら男の子だったお兄ちゃん。素晴らしいです。この関係性のちょっと不思議な家族に小さな女の子が加わることから映画は始まります。親から虐待を受けているらしい女の子をリリー・フランキーが連れ帰ったことから家族がひとり増えます。家族はそれぞれ仕事をしているのですが、リリー・フランキーは現場で足を怪我して働けなくなり、安藤サクラもクリーニング店をリストラされます。ばあちゃんの年金だけでは暮らしていけず、万引きをして生計を立てている、と言うのがこの家族なのです。
結局家族は実は血縁が無かった、と言うことが最終的に観客にわかるのですが、血縁によって仕方なく一緒に暮らしているだけの家族と、血の繋がりは無くても、必要に応じて一緒に暮らしている他人通しの方が家族の絆は深いのではないか、と言うのがこの映画の問いかけでありました。
「誰も知らない」もそうでしたが、単純に法律的には違法なことをしているのだけれどもそれぞれの人物がやむにやまれぬ事情から精一杯生きている、それを暖かい目で綴っているのが是枝作品の真骨頂だと思います。そういう意味ではパルムドールに値する作品だと言えましょう。
とにかく終盤の安藤サクラの演技だけでも観る価値はありました。
http://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/

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