「きみの鳥はうたえる」
2018年 106分(コピアポア・フィルム=函館シネマアイリス)映倫 G
監督:三宅唱 製作:菅原和博 プロデュース:菅原和博 企画:菅原和博 プロデューサー:松井宏 アソシエイトプロデューサー:寺尾修一 ラインプロデューサー: 城内政芳 原作: 佐藤泰志 脚本:三宅唱 撮影:四宮秀俊 美術:井上心平 衣裳:石原徳子 音楽:Hi’Spec
出演:
柄本佑(「僕」)/石橋静河(佐知子)/染谷将太(静雄)/足立智充(森口)/山本亜依(みずき)/柴田貴哉/水間ロン/OMSB/Hi’Spec/渡辺真起子(直子)/萩原聖人(島田)
上映館:新潟市民映画シネ・ウインド
採点:★★★★★
こういう映画は、駄目なひとは全然駄目でしょうね。別に何か特別な事が起こるわけでもなく、軽薄な男女のだらしない関係をだらだらと描いている映画です。しかも、社会的にはまともな人物であるはずのバイトの同僚や店長を風刺的に描いているので、真面目な人ほど不愉快に感じると思います。
これは主人公の「俺」が嘘つきですぐ約束を破るいやな奴で彼の目線で映画が進行していくからなのだと思いますが、途中から「佐知子」の目線も入ってきて、この映画、実は佐知子が本当の主人公なのでは?と思うあたりから徐々に惹きつけられては行きます。酔った「佐知子」がクラブで踊るシーンはとても魅力的です。
石橋静河は石橋凌と原田美枝子の娘だそうですが、お母さんのデビュー時のような衝撃的な感じではありませんが、とても自然体でありながら大胆な演技をする女優さんです。ありふれた陳腐とも言えるセリフを、自分の言葉としてさらりと言えるのは並大抵ではありません。この人の演技、特にラストシーンは、これまでのだらだらとした展開は果たしてこのためにあったのか、と合点がいきました。
ストーリーは男二人で共同生活をしている「僕」と「静男」、そして「僕」とつきあいはじめた「佐知子」の三人の関係を、ゆるり、ゆるりと描写していくだけです。
三宅監督の演出は、映画らしい省略の美学が見て取れます。バイト先の書店でこっそりとメールで会話する「僕」と佐知子のシーンでは、佐知子からのメールの中身は観客には見せないで、「僕」のリアクションだけで連想させるだけです。
「静男」と「佐知子」が2人だけでキャンプに行ってしまう場面では、2人の様子は一切描かれず、残された「僕」だけが描写されます。
このように、監督は画面に表さない事によって観客に様々な事柄を想像させると言う手法を取っているので、観客としてはとてもじれったい時間を強要させられます。
それらのことが、ラストシーンで一気に収斂していくのは見事な展開でした。
ところで、見終わって違和感を感じたのは「静雄」のキャラクターです。染谷将太は童顔で常に笑顔を浮かべている温和な人物です。シャツを着替えるシーンでは彼の丸まるとした肌の感じが子供っぽい印象に見えました。
「佐知子」が「静雄」と恋人として付き合うことにした、というのはなんだかとっても違和感を感じたので、染谷将太はミスキャストだったのでは?とも感じたのです。三角関係を際立たせるにはもっと強い印象の俳優の方が良かったのではないかと。
しかし、うがった見方ですが「静雄」が同性愛者だとすると、印象は変わります。というか、この映画の根本が変わってしまいます。映画はすべての答えを示さず、解釈は観客に委ねられ、映画は終わります。さて、このあと3人はどうなったのか。
石橋静河の着る胸元のゆったりしたTシャツがなんとなくエロティックで、激しい絡みのシーンがあるわけでもないのにエロいです。これは凄いことです。ちょっと危うい感じで目が離せない感じなのがとても良い女優さんでした。
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