「ベニスに死す」(MORTE A VENEZIA:DEATH IN VENICE )
1971年
メディア 131分 イタリア/フランス(WB) 映倫 G
監督:ルキノ・ヴィスコンティ 製作:ルキノ・ヴィスコンティ 製作総指揮:マリオ・ガロ/ロバート・ゴードン・エドワーズ 原作:トーマス・マン 脚本:ルキノ・ヴィスコンティ/ニコラ・バダルッコ
撮影:パスクァリーノ・デ・サンティス 音楽:グスタフ・マーラー
出演:
ダーク・ボガード(グスタフ・アシェンバッハ)/ビョルン・アンドレセン(タジオ)/シルヴァーナ・マンガーノ(タジオの母)/ロモロ・ヴァリ(ホテルのマネージャー)/マーク・バーンズ(アルフレッド)/ノラ・リッチ(家庭教師)/マリサ・ベレンソン(アシェンバッハ夫人)/キャロル・アンドレ(エスメラルダ)/フランコ・ファブリッツ( 床屋)
上映館:Tジョイ新潟万代SC8(午前十時の映画祭)
採点:★★★☆☆
この映画の主役は、アシェンバッハでも、タジオでもない。マーラーの交響曲第5番第4楽章アダージェットです。この、甘美で切なく、そしてドラマティック、しかも悲劇的な音楽こそ、この映画のすべてと言っても過言ではありません。
自らの作品の演奏会でブーイングを浴び、体調を崩した作曲家アシェンバッハは、静養のため訪れたベニスのホテルで完璧な美少年、タジオに出会います。彼はいつしかベニスの街中を、浜辺を、タジオの姿を追い求めてさ迷います。
しかし、ベニスの街には次第に疫病が蔓延し、死の陰が忍び寄ります。理性ではこの街を立ち去るべきだとわかっているのにタジオに心奪われ、彼の身体もやがて疫病に蝕まれていく…
老作曲家と描写されることも多いですが、この時ダーク・ボガード50歳。まだ老年という歳ではありませんが、老いを感じ始める年代だと思います。一方のビョルン・アンデルセンは16歳。老いることなど有り得ないと考えている年頃です。
この二人は一度も言葉を交わすこともなく、アシェンバッハの片思いに過ぎないのですが、この思いを性的なものととらえるのは、まあダーク・ボガード自身にゲイの噂があったりしてありがちな解釈なのですが、ちょっと違う気もします。
それは、回想シーンでアシェンバッハがエスメラルダという売春婦(因みに冒頭でアシェンバッハがベニスにやってくるシーンで乗っている船の名前がエスメラルダ)を買うシーンがあって、不能のため目的を達せられなかった事が描かれます。これをゲイだったからという解釈も出来ますが、むしろ年齢的なことから不能となったと考えます。
すると、アシェンバッハがタジオを追い求めるのは、既に自分からは失われつつある若さへの憧れが底にあると思うのです。このため、彼が追い求めるのは少女ではなく、少年でなければならず、それも完璧な美を持った少年が現実に現れたため、矢も立てもたまらず追い続けてしまうという芸術家の本能が描かれているのではないでしょうか。
マーラーの音楽と、ビョルン・アンデルセンの奇跡の名画を生んだと言うのがこの映画の評価として正しいと思います。映画自体は昔観たときと変わらず、至極退屈極まりないものでした。なので、表面的に見ると、変なオッサンが美少年をストーカーする気持ち悪い映画になってしまって、そういう感想も結構あるわけですが、それだけが映画の見方ではない、とだけ言っておきたいと思います。
まあ、自分の評価も退屈な映画と言うところは変わりませんけどね。
さて、次回の午前十時の映画祭は「時計じかけのオレンジ」なんですけど、昔観て嫌な印象しかなかったので、あまり観たくない映画です。「雨の訪問者」なんかも面白い映画なんですけど、女性がレイプされる映画は観たくないと言うのが率直な気持ちです。間違ってデートで観たりしたらヤバいですよね。映画って基本的に情報入れない方が良いけど、最低限そういうことは調べておく方が良さそうです。

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