「ばるぼら」
2019年 日本/ドイツ/イギリス(イオンエンターテイメント) 100分 映倫:R15+
監督:手塚眞 原作:手塚治虫 脚本:黒沢久子プロデュース:古賀俊輔 プロデューサー:古賀俊輔/姫田伸也/アダム・トレル 共同プロデューサー:湊谷恭史/ステファン・ホール/アントワネット・コエステル 撮影監督:クリストファー・ドイル 照明:和田雄二 録音:深田晃 美術統括:磯見俊裕 美術:露木恵美子 扮装統括:柘植伊佐夫 編集:
手塚眞 音楽:橋本一子 キャスティング:杉野剛 助監督:吉田聡 制作担当:奥泰典
出演:
稲垣吾郎(美倉洋介)/二階堂ふみ(ばるぼら)/渋川清彦(四谷弘行)/石橋静河(甲斐加奈子)/美波(里見志賀子)/大谷亮介(里見権八郎)/ISSAY(紫藤一成)/片山萌美(須方まなめ)/渡辺えり(ムネーモシュネー)
上映館:イオンシネマ新潟南#8
採点:★★★★☆
【ネタバレあり】
手塚治虫の作品を息子の手塚眞が監督するというのは、著作権の問題が発生しないのだそうてす。本人が著作権を持っているわけですから。その中でも好きな作品ということで選んだのが本作。
のっけから橋本一子のオリジナルジャスの音楽と、クリストファー・ドイルのキャメラによる映像にしびれます。どこか70年代のヨーロッパ映画を思わせる画面。
そんな新宿の地下通路に座り込む女。足元には酒瓶が転がり、酔いつぶれている様子。そこへ通りかかった流行作家の美倉はふと女の口ずさむ詩を聞く。
秋の日の/ヸオロンの/ためいきの/身にしみて/ひたぶるに/うら悲し。
ベルレーヌ…
“ばるぼら”と名乗るその女は彼を作家の美倉と見抜きます。そして言い放ちます。「あなたの作品は好きよ。何にも考えなくていいし、何にも残らない」
彼は女を自分のマンションに連れて行きますが、彼女にお茶を入れるように言うとお湯を火にかけたまま姿を消します。
美倉には彼に思いを寄せる政治家の娘や、自分の身の回りの面倒を見てくれる編集者の娘もいます。女ならいくらでもいると言うと、ばるぼらにはそれは誰もいないということね、と言われます。
美倉は次第に彼女に惹かれてゆき、彼女と共に場末のバーや得体の知れないダンスホール、はては彼女のねぐららしい廃品置き場にも行きます。
彼女からの結婚の申込みを受けた美倉は占い師の母親の指示に従い、不思議なカルト教団の教会で素っ裸で結婚の儀式に臨みますが、途中で警察に踏み込まれ、麻薬使用の疑いで逮捕されます。
一切の仕事を失った美倉に、女編集者はそれでも彼に仕事を持ってきます。しかし、自分のミューズであるばるぼらを失った彼にはもはや創作は出来なくなっていました。
ある日街でばるぼらを見つけた美倉は彼女と逃避行に出ます。車の故障で森をさ迷い、無人の屋敷にたどり着いた2人。しかし、ばるぼらは頭を石に打ちつけた傷により息絶えます。
ばるぼらの服を脱がせて自らの体温で彼女を生き返らせようと試みる美倉。しかし、彼が感じられるのはばるぼらの肉体の冷たさだけでした。
彼は、そうだ、ばるぼらの事を書かなければ、と鉛筆をとるのでした。
とにかく二階堂ふみが素晴らしい。「蜜のあわれ」は擬人化した金魚という難しい役どころでしたが、本作でもちょっと生身の肉体では無いような素晴らしい身体を惜しげもなくさらしています。
稲垣吾郎も美しい肉体の持ち主です。個人的にはスーツのネクタイはもっと細い方がヨーロッパ映画っぽくて良かった気がしますが。
この2人の絡みのシーンはとてもファッショナブルでした。
そう、やはりクリストファー・ドイルのキャメラは良かった。ばるぼらが街を歩く何気ないシーンはドイルの発案で黄色い傘を用意して撮られたそうですが、とても魅力的なシーンでした。
この作品は天才ともてはやされた手塚治虫でさえも、自分の作品が何も考えずに読めて何も残らないものかもと悩んでいたのかも、と思わせる作品でした。それを偉大な父親と常に比較される実の息子が映像化したという意味でも興味深い作品であります。
http://barbara-themovie.com/

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