「アンダードッグ 前編・後編」
2020年 (東映ビデオ) 前編=131分/後編=145分 映倫:R15+
監督:武正晴 原作:足立紳脚本:足立紳 製作:藤田晋/與田尚志 プロデューサー:佐藤現/平体雄二/宮田幸太郎 共同プロデューサー:谷口達彦/工藤良真 音楽プロデューサー:津島玄一 キャスティングディレクター:杉野剛 撮影:西村博光 照明:常谷良男 録音:藤丸和徳 整音:瀬川徹夫 美術:新田隆之/将多 衣装:宮本まさ江 ヘアメイク:金森恵 装飾:龍田哲児/前屋敷恵介 編集:洲崎千恵子 音響効果:柴崎憲治 音楽:海田庄吾 主題歌:石崎ひゅーい スクリプター:川野恵美 助監督:齊藤勇起 制作担当:柿本浩樹
出演:
森山未來(末永晃)北村匠海(大村龍太)/勝地涼(宮木瞬)/瀧内公美(明美)/
熊谷真実(兼子)/水川あさみ(佳子)/冨手麻妙(愛)/萩原みのり(加奈)/二ノ宮隆太郎(木田)/風間杜夫(幸三郎)/柄本明(作郎)/佐藤修/竹原慎二/山本博/友近/バッファロー吾郎A/好井まさお/じゅんいちダビッドソン/
ツムラフェスティバル/栄島智/ジャッキーちゃん
上映館:新潟市民映画館シネ・ウインド
採点:前編★★★★★/後編★★★☆☆
元日本ランカー1で今はくすぶっているボクサー晃、孤児院育ちでデビューから6戦1ラウンドKO勝ちの新鋭ボクサー龍太、それに売れないお笑い芸人でテレビの企画で晃と対戦することになった瞬の群像劇です。
晃がバイトで働いているデリヘルドライバーの仕事を淡々と描写される中で子連れのデリヘル嬢明美との関わりが物語の焦点となります。訳ありげな常連客、何かから逃げているような明美の様子。それらは後編で明らかになるわけですが。
そして晃にはお笑い芸人の瞬との対戦の話が来ます。テレビ局から演出の要請がある中、瞬は何かを変えようとして必死に練習をします。
そして試合当日、瞬は演出もお構いなしに、倒れても倒れても起き上がって来ます。そんな瞬に会場は割れんばかりの喝采を送ります。アンダードッグとは、「かませ犬」と訳されますが、弱そうな方に声援を送る、判官贔屓という意味だということです。結局晃は瞬に勝つことが出来ず、彼にはヤラセの汚名だけが残ってしまいます。
と、ここまでの前編はとても面白いと思いました。ここでは、むしろ瞬が主役だと言えます。この汚名から晃はどう立ち直るのか、が後編の興味だったと思います。
しかし、後編は残念ながら前編の伏線の回収に終始してしまい、ありきたりなストーリーになってしまったと思います。明美の受けているDV、謎の常連客と龍太との因縁や発生する事件、何よりも龍太がなぜ晃との対戦にこだわるのか。
結局龍太の指名により二人が対戦してそれがクライマックスになるわけですが、それはそれは某有名ボクシング映画のパクリと言えなくもないし、全体的に劇画的なストーリーとなってしまいました。
商業的にはこうした分かりやすいストーリーが必要なのだとは思いますが、気になるのは、最初から最後まで晃は受け身に過ぎず、自ら動くことは最後まで無かったと言うことです。どこかで強い意志に基づいて動くのだと思っていたので残念でした。日本映画にはこうした、全く決断せず、周囲に流されているだけの主人公がしばしば登場するのは興味深いことです。
結局この映画は前編だけで良かったかな、と思うのでありました。
(202107/08)
http://underdog-movie.jp/

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