「2001年宇宙の旅」(2001: A Space Odyssey)
1968年 アメリカ (ワーナー・ブラザース映画) 140分 映倫:G
監督:スタンリー・キューブリック 製作:スタンリー・キューブリック 原作:アーサー・C・クラーク 脚本:スタンリー・キューブリック/アーサー・C・クラーク 撮影:ジェフリー・アンスワース/ジョン・アルコット 美術:トニー・マスターズ/ハリー・ラング/アーネスト・アーチャー 衣装:ハーディ・エイミーズ 編集:レイ・ラブジョイ 音楽:アラム・ハチャトゥリアン/ジェルジ・リゲティ/ヨハン・シュトラウス/リヒャルト・シュトラウス 特撮監修:ダグラス・トランブル
出演:
ケア・デュリア(デビッド・ボーマン)/ゲイリー・ロックウッド(フランク・プール)/ウィリアム・シルベスター(ヘイウッド・R・フロイド)/ダニエル・リクター(月を見るもの)/レナード・ロシター(アンドレイ・スミスロフ)/マーガレット・タイザック(エレーナ)/ロバート・ビーティ(ラルフ・ハルヴォーセン)/ショーン・サリバン(ビル・マイケルズ)/ダグラス・レイン(HAL9000の声)
上映館:Tジョイ新潟万代#7(午前10時の映画祭)
採点:★★★★★
何十年ぶりに映画館で鑑賞いたしました。
改めてこの映画が1968年に公開されているということに驚嘆させられます。アポロ8号(フランク・ボーマン船長!)が月を周回して始めて月の裏側が撮影されたり、月から地球を撮影したのは1968年12月であり、その写真がこの映画のシーンに瓜二つだったというのは凄い。
この映画がその後のSF映画、アニメなどに与えた影響たるや計り知れないものがあります。コックピット内のモニタースクリーンに刻々と映し出される図形や文字の描写はその後のSFアニメなどでは、必須の描写ですし、壮大な宇宙空間を多面的なアングルで描く画面の素晴らしさ。
この時代にはまだパソコンなど無く、CGも無かったと言うの信じられない事です。もっとも、巨大宇宙船の中でランニングしている人物を写し続ける映像は、巨大な樽型のセットを回転させながら撮ると言うハリウッドではフレッド・アステアの時代からあった撮影手法であり、既存の技術をふんだんに使った映画だと言えると思います。
脚本はSF作家であるアーサー・C・クラークがアイデアを出し、それをキューブリック監督が選択するというやり方であったらしく、クラークのアイデアではナレーションで状況説明をする所を、キューブリックが一切のナレーションを使わず、映像だけで描くという斬新な映画になったようです。それは映画的には正しい選択であり、クラークは映画完成後に自分のアイデアを小説にまとめています。それはこの映画を理解する上での一助にはなりますが、必ずしも正解とも言い切れないのが映画というものです。
この映画の大いなる見所は木星探査船ディスカバリー1号内での出来事でしょう。コンピューターHAL9000は現代のAIの持つ危うさを予見しているとも言えましょう。コンピューターに間違いはない、間違うのは常に人間だ、というHAL9000というのは本当に怖かった。こういうコンピューターの暴走と言うのも、とても先進的なアイデアでした。ちなみにHALはIBMのアルファベットを1文字ずつずらしたものだという説もありますね。
そういえば、宇宙ステーションや宇宙船の中にヒルトンホテルやらバンナム航空など民間企業のロゴが入っているのもリアリティがありました。
ラストに向かう、いわゆる「サイケシーン」も色々なSFで使われました。そして分かり難いエンディング。これもSFのエンディングは理解不能でも良い、否、分かり難い方が良いのだ、と言う悪しき伝統になっているかも知れません。明確な結論を出さずに観客にラストを委ねるってそういう意味じゃないんだけどなあ。
キューブリック自身は2001年を待たず、1999年に死亡。これも何だか皮肉です。この映画、オープニングの画像の無い、音楽だけのシーンに始まり、エンディングもエンドタイトルが出てから数分間、「美しく青きドナウ」の最後まで画像無しで続くという変わった映画なので、是非この機会に映画館で鑑賞される事をお勧めします。本作品の上映はグループAは7/22まで、グループBは7/23〜8/5となっております。
2021/7/1510:20(202178)

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