「最後の決闘裁判」(The Last Duel)
2021年アメリカ(ディズニー)153分映倫:PG12
監督:リドリー・スコット 製作:リドリー・スコット/ケビン・J・ウォルシュ/ジェニファー・フォックス/ニコール・ホロフセナー/マット・デイモン/ベン・アフレック 製作総指揮:
ケビン・ハローラン/ドリュー・ビントン/マディソン・エインリー 原作:エリック・ジェイガー 脚本:ニコール・ホロフセナー/ベン・アフレック/マット・デイモン 撮影:ダリウス・ウォルスキー 美術:アーサー・マックス 衣装:ジャンティ・イェーツ 編集:クレア・シンプソン 音楽: ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
出演:
マット・デイモン(ジャン・ド・カルージュ)/アダム・ドライバー(ジャック・ル・グリ)/ジョディ・カマー(マルグリット・ド・カルージュ)/ベン・アフレック(アランソン伯爵ピエール)/ハリエット・ウォルター/アレックス・ロウザー/マートン・ソーカス(クレスピン)/ナサニエル・パーカー
上映館:ユナイテッドシネマ新潟#10
採点:★★★★★
【ネタバレあり】
14世紀末にフランスで行われた最後の決闘の顛末を描く映画ですが、同じ話を3人の視点から繰り返して描きます。そう、黒澤明監督の「羅生門」を意識しているのは間違いないでしょう。強姦事件の裁きという内容も共通しています。
3人の登場人物はマット・デイモン演ずるジャン・ド・カルージュ。勇猛だけど粗野で直情的な人物。次にアダム・ドライバー演ずるジャック・ル・グリ。知的で計算にも明るく、伯爵に気に入られてジャンが次ぐはずだった役職に就いています。そしてジョディ・カマー演ずるジャンの妻マルグリット。
まず物語はジャンの視点で描かれます。結婚してマルグリットの父親から贈与されるはずの領地が伯爵によってル・グリの物になっていることで確執が生まれます。この事で伯爵を訴えたことで伯爵を敵に回し、どんどん立場が悪くなって行きます。
そして敗北に終わったスコットランド遠征から帰り、パリに行っている間に事件は起こります。パリから帰ると妻から留守中にル・グリから強姦されたと告げられます。彼はル・グリと決闘する事を決断します。
第2部はル・グリの視点で描かれます。彼のように文武両道の男からすれば、ジャンのような武遍だけの男から快く思われないのは片腹痛いわけで、領地の納税を厳格にして伯爵の財政を立て直したという自負があります。しかしマルグリットを一目見た時から彼女が自分と同じように知的で、粗野な夫とはうまく行っていないと感じます。
そして彼女が1人でいる時を見計らって偶然を装って訪問して思いを遂げようとします。当然淑女なので抵抗はするけれども、彼女は階段を上がるときに靴を脱いだし、寝室へ誘うように行ったではありませんか。
思いを遂げた彼は当然の如く口止めをします。今までこういうことをされて、口外するような女はひとりもいなかったではありませんか。
最後はマルグリットの視点となります。しかしまあ、私の夫となるべく男はなんと粗野なのでしょう。持参した領地の件で伯爵を敵に回してしまうなんてなんと考えの足りない人なのでしょう。そして夜の事だって、単に子どもを作るためにしているだけ。おまけに他人に見られないようにと出歩くことさえ禁じるなんて。
まあでもようやくル・グリさんとの因縁を解消出来る機会が来たわ。人前に出るなんて何年ぶりかしら。ル・グリさんたら向こうの方から手を差し伸べて和解を演出するなんて、なかなか出来たお人のようね。でも、稀代の女たらしという噂だから気をつけなくちゃね。
そして問題の日、ル・グリが自分で都合よく記憶していたのとは違い、靴が脱げたのも偶然だし、私はちっとも気持ちよくなんか無かったわ。もう屈辱でいっぱい。
というわけで、ぼーっと観ていると見逃してしまいそうな差異ではありますが、確実に視点は異なっています。特に階段で靴が脱げたのはル・グリにはOKサインだと思ってしまったポイントかも知れません。
てなことで、決闘に負けると負けた本人だけでなく、偽証をした妻も火炙りになってしまうと知ったマグリットは本当に絶望的な気持ちになったことでしょう。最もジャンはあんな文弱な奴に負けるわけがないと多寡をくくっていたようにも思います。
長さを感じさせない面白い映画でした。
2021/10/25 9:00(202199)

0