「パワー・オブ・ザ・ドッグ」(The Power of the Dog)
2021年イギリス/オーストラリア/アメリカ/カナダ/ニュージーランド(ネットフリックス) 128分 映倫:G
監督:ジェーン・カンピオン 製作:エミール・シャーマン/イアン・カニング/ロジェ・フラピエ/ジェーン・カンピオン/ターニャ・セガッチアン 製作総指揮:サイモン・ギリス/ローズ・ガーネット/ジョン・ウッドワード 原作:トーマス・サベージ 脚本:ジェーン・カンピオン 撮影:アリ・ウェグナー 美術:グラント・メイジャー 衣装:クリスティ・キャメロン 編集:ピーター・シベラス 音楽:ジョニー・グリーンウッド
出演:
ベネディクト・カンバーバッチ(フィル)/キルステン・ダンスト(ローズ)/ジェシー・プレモンス(ジョージ)/コディ・スミット=マクフィー(ピーター)/トーマシン・マッケンジー(ローラ)/ジュヌビエーブ・レモン(ミセス・ルイス)/キース・キャラダイン(エドワード)/フランセス・コンロイ(老婦人)/ピーター・キャロル(老紳士)
上映館:イオンシネマ新潟西#6
採点:★★★★★
近年の傾向としてネットフリックスをはじめとした配信サービスの製作した映画アカデミー賞を受賞することが増えていますが、これは偶然ではありません。商業ベースに乗りにくい作品もネット配信を前提とすれば製作可能になったということで、これは一時期ビデオレンタルを前提として映画が製作された時代があった延長線の事象と言えましょう。なので悲観すべきことではないと思います。
さてそうした作品のひとつである本作はジェーン・カンピオン監督の12年振りの監督作品ということでネットフリックスなければ実現しえなかったかも知れません。この作品、かなり宣伝しづらい内容で、どのサイトを見ても同じ紹介文が載っているだけで要領を得ませんが、とにかく何の情報も入れずに観る事をお勧めします。
舞台は1925年のモンタナ州。大牧場を経営する兄フィルと弟ジョージの兄弟は牧童たちと牛を追って鉄道駅までやってきます。そこで2人は宿の女主人ローズとその息子ピーターと出合います。粗暴な兄は2人をからかい、ローズは泣いてしまいますが、ジョージはそんなローズを慰めます。そして2人は惹かれ合い、結婚してしまうのですが、どうせ金目当ての結婚だと苛立つフィルとの同居生活でローズは次第に心を病んでいくのでした。
夏休みで大学から帰省したローズの息子ピーターをフィルはからかいの対象としていましたが、彼が早期に馬を乗りこなすなど意外に根性があると見直して2人はいつしか行動を共にするようになります。次第に心を開いていくフィル。しかし…
【ここから結末について書きます】
ピーターを気に入ったフィルは自作のロープをプレゼントすることにします。しかし仕上げに必要な生皮をローズがインディアンに譲ってしまったため荒れ狂います。ピーターは生皮なら自分が持っていると提供し、それを使ってフィルはロープを仕上げます。
翌日体調を崩したフィルは病院へ運ばれますがあっけなく亡くなってしまいます。原因は炭疽菌によるものでした。ジョージは絶句します。あれほど炭疽菌に注意深かった兄が何故?
一方、ピーターはフィルの作ったロープをゴム手袋で持ち、静かにベッドの下にしまうのでした。
何事にも自信たっぷりで自分の思うようにしないと気がすまない兄と、いつも控えめでおどおどしている弟の対比が際立っています。その弟にしても勝手にグランドピアノを買って州知事の前で妻に弾かせようとするなど男とは身勝手なものです。
フィルもジョージも元々悪い人間ではないのだけれども、非常に無神経なところが女性から見ると勘に触るのでしょうね。特にフィルの言動についてはひとつひとつが周囲に圧力を掛けていることがしっかりと描かれていて、観客を圧迫し続けます。この辺は女性の視点ならではという気もします。
この映画の怖いところは、一見仲良くしているように思っていても、相手は何年も前に受けた屈辱を忘れずに虎視眈々と復讐の機会を狙っているのかも知れない、という事です。ピーターの実の父親は自殺してピーターが第一発見者だったということですが、もしかしたらそれも、と思わされる結末でした。いやー怖い映画でした。
2021/11/22 12:10(2021107)
https://www.netflix.com/title/81127997

0