□三週続けて「バッシング」
結局、3週間続けて小林政広監督の「バッシング」を見に行ってしまった。
我ながら...馬鹿である。
「(映画は)もう二度と作らない!」
と、いっていたのに、奥さんに
「いいかな次」
とか言っている。
貯金通帳を出してきて穴のあくほど眺めたりする
「映画監督小林政広の日記」に書かれている「バッシング」製作前の情景。
「周囲からつまはじきにされる女の子」のイメージをつかんだ小林監督は走り
出す。占部房子に出演をとりつけ、3日で台本をしあげ、奥さんに言い訳。
そして、撮影時期が「今月の末!」ときいた助監督があきれていう。
「大丈夫ですか?アタマ?」
□有子の「おでん」
ヒロインの有子がコンビニで「おでん」を買う。「コンニャク、ガンモ..
容器を別々にして。おつゆたっぷりいれて」いやな客だ。
父親が自殺した後、コンビニで販売拒否?にあった有子はやむなくマックを
食べ、そして日本を離れる決意を固める。
さすがに3回目ともなると最初は広すぎた映画の「行間」も狭まり、有子の
心情にのっかることができました。そう、コンビニの「おでん」は有子の最
後の命綱だったんだ。
そして何度見ても占部房子の表情、顔はすごい。あるときの顔は能面のよう、
ある場面ではなんともいやなやつ、あるシーンではとても愛おしい...
まさに女優。小林監督が惚れこむのも当然でしょう。
□香川照之の「激白」
「映画監督小林政広の日記」のあとがきで、香川照之が監督との初対面をこ
んなふうに書いています。
小林政広という人は、一見気が弱そうで、口数も少なく、声もぼそぼそい
っているので何を話しているのかよくわからない人だった。(中略)
コーヒーを十杯とワンカップを一ダース飲んで、それで一日があっと言う
まに暮れていくような人間だった。
撮影は酷寒のゴーストタウン、予算がないのでスタッフはほんの一握り、本
番は一回だけ、休憩の弁当すらおぼつかない、たった1週間の撮影...
しかし東京に戻った彼の脳裏にこの1週間が「稀有な体験」としてきざまれ、
気がつけば小林監督の作品に毎回のように出演するほど「信じきってしまっ
て」いたのでした。そして激白する。「彼とカンヌの赤絨毯の上をあるき、
彼を感涙にむせばせる...私たちがあなたを男にする。」、と。
そんな彼の気持ちを「あなたにはわかるまい」と香川照之と書いているけど、
わづか3回、「バッシング」とイベントで歌い、話す小林監督をみただけの
私ですら断固たる自信もっていえる。「娯楽の形は一つではない。」と私の
問いかけに答えてくれた小林政広こそ、日本映画界が誇るべき本当のクリエ
イター、本物の映画監督なんだ!
※「おとゲー」2006/7/14号掲載
※90,000ヒット達成いたしました。ありがとうございます。
これからもご贔屓に!

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