弥生はいくつもの啓示を受けるようにしてここに来た。それは、おばである、ゆきのの家。濃い緑の匂い立ち込めるその古い一軒家に、変わり者の音楽教師ゆきのはひっそりと暮らしている。ある曇った午後、ゆきのの弾くピアノの音色が空に消えていくのを聴いたとき、弥生の19歳、初夏の物語は始まった。
Ciel Bleuの四季さんが第6回のたらいまわし企画で、「棺桶にいれたい本」としてあげられていました。(すごいお題だったのね。)
ストーリーに大きな起伏があるわけではないのですが、読み初めから、本の中に吸い込まれるように浸れて、心地よい文章に酔いました。
主人公と同調して、なんでもないシーンで胸が締め付けられたり、涙ぐんだり。
1ページ1ページを大切に読み進めたのは久しぶりです。
魅力的な登場人物、鮮やかに浮かぶ懐かしいような風景、なのに現実と夢の間を漂っているような浮遊感があります。
ただ、私はその感覚がすごく好きだったんですが、人によっては少女趣味な稚拙さを感じるかもしれません。
美しく優しい作品でした。また読み返すと思います。

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