
人生の落ちこぼれたちを描く連作短編集。
期待以上でした。
作家が本職ではないとは、とうてい思えない出来です。
作品同士のリンクは、それほど珍しくはないでしょう。
それでも、読み手には油断できない設定となります。
店の前でふと目が行った若者、掲示板に書き込まれた投稿、ラジオにリクエスト曲を出した男性、物語に大きくかかわるリンクと、全然無関係に出没するリンク。
そして内容のセンスの良さ。
それぞれの落ちこぼれ達の、滑稽で無様で、でも純粋で憎めない様は、そのまま「劇団ひとり」の今までのイメージと重なります。
とても優しく温かい気持ちにさせられました。
出だし、軽く読めてまあまあだな、くらいに思っていたのが、なんとなく滑稽な表現が彼の個性だと気付いてからは、しだいに感情移入し、なんどもグッと来る場面がありました。
有名人の本としてではなくても、十分楽しめる作品です。
べた褒めなわりに、五つ星をつけられないのは、数箇所リアリティのない不自然な表現が気になったからです。次作が楽しみです。

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