盗賊の村で育ち、奴隷としてあまりにも酷い扱いを受けていたため、人としての情緒が欠落したミミズクと名乗る少女。
そんな自分を食べてもらおうと、魔物のすむ夜の森へ行ったミミズクは、夜の王とよばれる魔物に出会う。
美しい夜の王に惹かれ、いつしか彼の近くに居ることを許されたミミズクは幸せだったが。
電撃文庫大賞作品ということで、久々に衝動買いしたファンタジー作品。
詩的で自己陶酔型の文章が、初め鼻に付いたのですが、優しくて美しい世界観に引かれて最後まで一気読みでした。
アマゾンの書評でも賛否別れてましたが、読み手を選びそうな作品です。
私は大好きですが、人にはあまり勧められないかな、といった感じ。
まるで童話か詩のようなのです。
リアリティはなく、深い人物描写もない。そんなものを求めて読んではいけません。
「美しい魔物」。もうそれだけで素敵で目が離せませんでした。
少し頭がおかしいような、ミミズクの描写があり、そんなミミズクを愛する人たちが現れ、人との関わりで愛を知ったミミズクの人間らしい言動をする変化も良かったし、それでもなお、夜の王を求め続けるミミズクの想いが健気でした。
けして美しい少女ではないけれど心が澄んだミミズクと、魔物を統べる夜の王とのコントラストが見事です。
吸血鬼とか、悪魔とか、魔物などが美しく表現されていると、とってもそそられてしまいます。ご同類の方にはオススメです。

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