現代社会の典型的な若者「尾島健太」と、戦争のため航空隊で訓練飛行中の「石庭吾一」が、タイムスリップを起こして入れ替わってしまう。
なぜか容姿がそっくりだった2人は、それぞれ入れ替わった状態での生活を余儀なくされる。
この本は「
なれのはて」のshortさんの紹介記事を見て読みました。
とても面白かったです。
途中、今年読んだ中で1番かも、なんて思いながら読んでいましたから。
文章は軽いタッチで読みやすく、人物描写も秀逸で、突飛もない設定なのにリアルで、とても自然に話が流れていくのです。
戦時中の貧しい生活や軍隊の厳しさなんて、ほとんど理解できないのですが、体験する主人公が、現代の若者だということで、とてもリアルに共感できるのです。
反対に、戦時中から現代へ来た若者の方は、その戸惑い振りが滑稽で、笑いを誘うのですが、所々ピリリと風刺が効いていて、現代社会の自堕落ぶりや、贅沢さが恥ずかしく思えるほど。でも、あくまで軽くて説教くさくないのがいいのです。
片方は戦時中ということもあって、ハラハラしたり切ない場面も多いのですが、全体的にはユーモアに富んだエンターテイメント作品です。
星半個分減らしてしまったのは、ラストが好みじゃなかったので。内容的にはラストも上手いと思います。

0