爆発。
「堪忍袋の緒が切れて…」怒りを爆発させてガイジンレスラーを叩きのめすリキドーザンは、戦争に負けて落ち込んでいた日本国民を街頭TVの前で狂喜乱舞させた。
人類の夢を乗せて、宇宙を飛び回る筈だったスペースシャトルが空中で爆発・分解した時に我々は人間が天に召される新たなるパターンを知り、悲しみながらも空に散った殉教者達に不思議なセンチメンタリズムを感じた。
オーティス・レディングやジェームス・ブラウンにティナ・ターナー…ダンスの神々への捧げ物としか思えない仕草とシャウト、彼ら黒人達が誇りとするカーリーヘアさえも「爆発するソウル」を表しているとしか思えない。
イスラム過激派による自爆テロ。ただただ恐怖の対象ではあるけれど、神の教えの為に身を捧げ、自ら進んで爆弾の一部と化した少女を我々が一方的に責める事には後ろめたさを感じる。あってはならない事だけれど、美徳がちらつくから、ではないだろうか。
ニトログリセリンが開発されて以降…いやそれよりずっと昔から火山は爆発し、それどころか、我々生命体はビッグバンという爆発からすべてが始まっているのだ。夜空の星が朝になって地球の裏側へ帰って行くように、我々の帰結する先も「爆発」なのかもしれない。遠いふるさとであり、あるいは脳にプログラムされた神話のようなものかもしれない。それが良いものであれ悪いものであれ、我々はどこか爆発にロマンチシズムを求めて止まないのである。
そして某月某日、新宿に爆発の精が舞い降りた。彼女達はフルワットのアンプを鳴らす事もせず、転がしのモニターに足をかけて身を乗り出し客を挑発する事もなく、ロイヤル且つエレガントに…時にはニッポンの心・演歌や1920年代に欧米のリビングで奏でられていたクラシカルなポップスの意匠を纏って、我々をパンキッシュに発破させてしまったのである。彼女達が演奏を始めると、ジャックスの水橋くんやWinkの2人が云わなくとも時計が止まる。そういえば朝からロクなものを食べていなかったオレの腹時計ですら、である。
超新星爆発は、その地で起こったのが何万年前であろうと、我々の目に届くまで妖しく煌めき続ける。今日、新宿で起こった静かなる爆発が何万光年も離れた星のタコ型宇宙人達をウットリさせるのはいつの日の事だろうか。…いや、それは無用の心配かもしれない。もしかしたら彼らは空飛ぶ円盤にて、えっちらおっちらと「前肩」を観に来ていたのかもしれないのだから。彼らは異星に戻ってボスに報告するだろう。
バクハツスルヨウセイ、マエカタ、カワイイ!
おわり。


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