世界貿易機構(WTO)のドーハラウンドは長年暗礁に乗り上げていたが合意に向けて急展開する可能性が出てきた。ラミー事務局長の示した合意案は日本にとって農産品の一層の市場開放を迫る厳しい内容であり日本は窮地に追い込まれた。
日本が200%を超える高関税で保護している農産物は101品目あり、全体の8%を占める。その重要品目が合意案で4%に半減されると50品目しか保護できない事に成り、品目の指定を巡って大騒ぎになるだろう。若林農水相は8%を死守する意向だが、それでは世界の孤児に成り、ドーハラウンドを潰した国として非難を一身に浴びる事になる。
農業分野はどこの先進国でも保護策で守られてきた。日本も高をくくってどうせ合意に至らないだろうと思っていたらしいが、それでは多角的貿易交渉は進展しない。米に700%もの恥ずかしいくらいの関税を掛けてきたが何時までも続くわけが無い。途上国に対し工業品の関税を大幅に引き下げる事を求める以上、先進国が農産品に対する関税を引き下げなければ引き合わない。欧州も大きく妥協し、米国も農業補助金を150億ドル以下に下げ、ブラジル、インド、中国まで歩み寄ったのだから、日本だけ駄々をこねるわけには行かない。
若林農水相も甘利経産相も内閣改造で交替させられるだろうから、潔く合意案を受け容れて帰ってくればよい。じたばたしても無駄な抵抗である。無理を通せば道理が引っ込む時代ではない。今やグローバリズムの時代だからエゴ丸出しは通じない。
減反、保護策、補助金で生き永らえて来た日本の農業はこの辺で振り出しに戻って真の国際競争力を取り戻すべく出直した方が良い。コストで負けても味と安全性でで勝負である。

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