自民党選対委員長の古賀氏が東国原知事を宮崎に訪ね、衆院選への出馬を強く要請した。見返りは総務大臣の椅子だと言う噂が専らである。自公政権への支持率を上げる為の奇策であり最後の悪足掻きでもある。
対するに東国原知事は自分を自民党の総裁候補として選挙を戦う積りはあるかと古賀氏に訊き、大きく出た。流石の古賀さんも吃驚して言葉を濁した。まさか冗談だとは思うが総裁候補にすれば出馬しても良いとの意思表示と取れなくも無い。知事はかねがね国政への転進に色気を見せていたが県民の圧倒的な反対にあって断念していた。若し自民党の総裁候補として出馬するなら県民も応援すると思ったのだろう。
県知事は強大な権限があるから何でもトップの意思の通りに改革できるが、自民党の大臣程度では大した事はできない。誰よりもそれを知っている知事が真面目に総裁の椅子を要求したのかも知れない。冗句なら冗句と言うだろうがあの顔は真面目だった。因みにもう一つ出馬の条件に挙げたのが全国知事会で決めた地方分権への提言を自民党のマニフェストにそのまま採用しろと言うものであり、これは至極真面目な要求である。
若し真面目に総裁の椅子を要求したとすれば余りにも身の程知らずである。ついこの前まで一介のお笑いタレントでビートたけしの弟子として左程売れず食いはぐれていた。芸能界に見切りをつけ一念発起し故郷で知事選に立候補したが、十分事前のどぶ板選挙活動が効を奏して見事当選した。前知事の不祥事に県民がうんざりしていた事も幸いした。懸命に努力して40歳を過ぎて早稲田の政経学部に受かった事も県民から大きく評価されたのだろう。
お笑いタレントが知事になったと格好の話題を提供した為マスコミに持て囃されてすっかり人気者となり、何をやってもマスコミが好意的に取上げたので世論に歓迎された。
然し大阪府の橋下知事と比べれば東国原知事の実績はさしたるものが無い。宮崎県の物産を売り込んだだけである。流石タレントだけあってテレビへの露出は巧みである。県政はブレインに任せて自分は半分以上東京でタレント活動をしている。普通なら知事の職場と職務放棄であって非難される筈であるが、人柄ゆえか大目に見られている。
知事ならこういうユニークな人物が一人くらいなるのも良いが、GDP世界第二位の日本のトップにお笑いタレントが座るのはそれこそお笑いである。喩え冗談でも言うべきではない。尤も麻生さんでも務まるのだから自民党総裁を舐めたのかもしれない。
日本は今お笑いタレント全盛の時代であり、軽佻浮薄の文化が真っ盛りである。深刻に考えるものは暗いと嫌われ、馬鹿でも明るいのが好まれる。それも時代の風潮だから文句を言う積りは無いが、問題はお笑いタレントが付け上がって自分は偉いのだと勘違いする事にある。身の程知らずのなりあがり者がのさばる世の中にはうんざりする。

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