ムバラク政権を批判するエジプトのデモ活動は益々勢いを増してきた。デモは全土に拡大しカイロでは数万人規模に膨れ上がった。デモ隊と警察隊との衝突で死者が24名、負傷者が1000人に達した。ついに軍隊も出動したが一部の軍人はデモ隊と握手したり抱擁する者もいると言う。いよいよムバラク政権の終わりの始まりである。
ムバラク大統領は国営テレビで演説し全閣僚の更迭を発表、新内閣を発足させると表明した。但しデモは体制の安定を揺るがす陰謀であるから治安維持のためどんな決定も辞さないとして退陣要求には応じない強硬姿勢を見せた。民衆の標的はムバラク氏本人だから、デモ隊が内閣改造で満足する筈が無い。大統領は夜間外出禁止令を出したがさして効果が無くデモ隊の一部は暴徒化して与党の国民民主党本部に放火しビルが炎上した。
オバマ米大統領はムバラク氏と電話会談して大統領が経済改革と民主化を実現するよう求めた。ネットや携帯電話の遮断を止めるよう要請した。米政府が実質的にデモ隊を支持し、大統領に引導を渡したようなものである。ギブス報道官もエジプトへの1300億円に上る経済、軍事支援を見直す方針を示した。エジプトのイスラム原理主義を封じ込めてアメリカのテロ対策に協力すると言う大義名分の下で強権政治を見逃して貰ったムバラク氏もアメリカの支持を失えば一巻の終わりである。
前のIAEA事務局長でノーベル平和賞を受賞したエルバラダイ氏も急遽帰国してデモ隊に加わったが警察によって自宅監禁された。同氏は次の大統領選に出馬の意向を示していたから恰好の受け皿が出来た。エルバラダイ氏は長年国連で活躍して国際政治に通じているから資格は十分である。但しエジプトトでは軍の支持が無ければ大統領になるのは困難である。歴代大統領は全て軍の出身である。エジプト軍がクーデターで王制をを倒したので軍に対する国民の信頼が厚い。逆に警察はムバラクの犬と見られて憎まれている。ムバラクが辞任しても後継は軍の幹部から選ばれる可能性が大きい。もしもアメリカの介入でエルバラダイ氏が大統領になればエジプトはアラブの盟主としてイランの核開発を止めさせる事に全力を注ぐと思う。私は期待でわくわくして来た。独裁者が民衆の反乱によって失脚するほど愉快な事は無い。古くはフランス革命でのルイ14世とマリーアントワネット、ロシア革命のニコライ皇帝、ルーマニアのチャウシェスク大統領夫妻、フィリッピンのマルコス大統領等が思い浮かぶ。金正日も今の内に早く民衆の怒りで倒れて欲しい。無傷で死なせるのは癪に障る。

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